風の華

海峡は 荒くれる波
カモメが 啼き騒ぐ
未練残し発つ 人のように
遠ざかる フェリーボート
温もり求め 人が寄り添う
ターミナル 待合室
恋のいのち ちりぢり
儚くも 舞い飛ぶ 風の華

望郷が この胸を突く
夜汽車の 揺籃で
気丈に暮らす 母の姿
映し出す 曇り硝子
人の哀しみ そっと見て来た
鉄道 埠頭駅
愛の記憶 はらはら
寒々と 降り積む 雪の華

海鳴りが 掻き消して行く
激しい 慟哭を
漁火が灯る ぼんやりと
思い出の 集魚灯
慣れない酒に 酔い乱され
抱いて抱かれた 旅の宿
女心 こなごな 憐れにも
砕かれ 波の華

恋のいのち ちりぢり
儚くも 舞い飛ぶ 風の華
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