母しぐれ

お腹痛めた 愛し子を
憎くて手放す 親はない
悔いているはずいまだって
どんなに月日 経とうとも
すすり泣くよに 降る雨は
私の目には 母しぐれ

いいえ他人の 空似だと
言い切る口許 震えてた
うわさ尋ねた 居酒屋の
女将の頬の 泣きぼくろ
紺の暖簾を 濡らしてた
あの夜の雨も 母しぐれ

わが子見捨てた その罪の
罰なら充分 受けたはず
恨み忘れて 老いた身の
しあわせ祈る 宮参り
親子なりゃこそ 届いたか
涙のような 母しぐれ
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