嫁入り舟

傘にからみつく 柳をよけながら
雨の堀割りを 嫁入り舟がゆく
彼のもとへ嫁ぐひとを 私はずぶ濡れて
みつめている 頬の泪 ぬぐいもせずに
今日の最終で この町出たいけど
老いた母ひとり 残して行かれない

濡れた白壁を かすめて飛ぶ燕
あやめ咲く中を 嫁入り舟がゆく
彼の手紙細く裂いて 水面に浮かべてる
かなしみなど誰も知らず 小舟に手を振る
今日の最終で この町出たいけど
老いた母ひとり 残して行かれない

いちどだけ彼にあげた 唇かみしめて
雨の中にかすんでゆく 幸福見送る
今日の最終で この町出たいけど
老いた母ひとり 残して行かれない
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