山椒哀歌

人買い舟が沖を漕ぐ
どうせ売られるこの私
細い目をした船頭さんよ
もっとゆっくり漕ぎなされ

越後つついし親不知
雪の海辺を出た舟は
十四娘を六人乗せて
行方知れずの旅に出る

夜の暗さに身を隠し
霧になぶられ舟はゆく
返せ戻せと叫んでみても
岸に返すは波ばかり

幼い頃の想い出も
弥彦の山の忘れ草
この身一つで救える母の
淋しい笑顔が目に浮かぶ
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