晩夏

夏の日の幻 指先で弾けば
さらさらと砂の上に
くずれ堕ちて 日暮れ
紅の渚に 秋風のくちぶえ
ヒューヒューと躰の中
逆さに撫でる
風よ 起こさないで
眠りかけた 愛の記憶を
風よ うたわないで
さむい名残り唄は
アデューアデュー‥‥夏よ

海猫の悲鳴に 褪せてゆく太陽
ゆらゆらと波に消えて
海は夜の とばり
月影に目を伏せ うずくまる心に
ひたひたと寄せてかえす
海はやさしい
波よ どこか遠く
抱いて行って 流れのままに
波よ 騒がないで
夜が終るまでは
アデューアデュー‥‥夏よ

波よ どこか遠く
抱いて行って 流れのままに
波よ 騒がないで
夜が終るまでは
アデューアデュー‥‥夏よ
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