肉体の亡霊

朝焼けの中不気味に蠢く影
灰褐色の腐臭を振りまく群れ
生きているようで生きてない
死んでいるようで死んでない
両手垂らして来る日も彷徨(さまよ)うだけ

歩くだけの 動くだけの
にじるだけの 亡霊
しゃぶるだけの すするだけの
食らうだけの 亡霊
わめくだけの 呻くだけの
唸るだけの 亡霊
そは 肉体の亡霊

人の形の抜け殻生まれた理由(わけ)
悪の仕業と言うのはたやすいこと
生き抜こうにも知恵がない
死に往こうにも誇りない
沈む夕陽に粛々飲まれるだけ

歩くだけの 動くだけの
にじるだけの 亡霊
しゃぶるだけの すするだけの
食らうだけの 亡霊
わめくだけの 呻くだけの
唸るだけの 亡霊
そは 肉体の亡霊

恐ろしや 恐ろしや
死人(しびと)の行進 恐ろしや
悍(おぞ)ましや 悍ましや
死人の行列 悍ましや

恨めしや 恨めしや
心の温もり 恨めしや
妬ましや 妬ましや
心の灯(ともしび) 妬ましや

夢も希望も潰えた砂漠の町
生きとし生けるもの皆立ち去りゆく
生きているようで死んでいる
死んでいるようで生きている
魂忘れ満たすは本能だけ

歩くだけの 動くだけの
にじるだけの 亡霊
しゃぶるだけの すするだけの
食らうだけの 亡霊
わめくだけの 呻くだけの
唸るだけの 亡霊
そは 肉体の亡霊

生きているようで生きてない
死んでいるようで死んでない
生き抜こうにも知恵がない
死に往こうにも誇りない

蠢くだけの
のたくるだけの 彷徨うだけの
あはれ亡霊

蠢くだけの
のたくるだけの 彷徨うだけの
あはれ亡霊
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