大和路

「空蝉(うつせみ)のあはれ写(うつ)せし水桶(みずおけ)は
揺(ゆ)るる恋唄(こいうた)とほく響きて」

山(やま)の辺(べ)の道 空青く
緑の苔むす 秋篠寺(あきしのでら)
あなた忘れの 旅なのに
ついてくるのね 想い出が
故郷(ふるさと)じゃないのに 大和路は
哀しい時に 来たくなる

さえずる鳥も 野の花も
茶店ののれんも 暖かい
揺れる川面に 浮かぶ顔
そっと消します 手を入れて
故郷(ふるさと)じゃないのに 大和路は
瀬音が母の 声になる

飛鳥(あすか)の里の 碑(いしぶみ)に
刻んだ恋歌 身に沁みる
花の淋しさ はかなさが
わかる女に なりました
故郷(ふるさと)じゃないのに 大和路は
涙を捨てに 来たくなる
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