かあちゃんの歌

18 半ばで故郷をすて
こんな田舎は嫌だよと
でっかい男になるんだと
かあちゃん見送る汽車の窓

19、20はひたむきに
ビルの掃除に明け暮れた
工事現場の親方が
怖くて怖くて嫌だった

行こうか 帰ろうか
どっちつかずの僕だった
かあちゃん僕をひっぱたき
「帰ってくるな!」と叱られた

それから3年 どさ回り
博多・小倉でどつかれて
長崎・佐世保で船に乗り
気がつきゃ大阪 花の街

働く先も見つからず
コンビニの前に座り込む
あかね色した夕焼けが
沈む向こうに故郷あり

行こうか 帰ろうか
どっちつかずの僕だった
かあちゃん「お金はあるのか」と
電話の向こうで泣いていた

あれから幾度も冬を越え
何とか大人になったけど
幼き我が子を胸に抱き
僕は立派になれたかな

行こうか 帰ろうか
どっちつかずの僕だった
かあちゃん 見ていてくれるかな
かあちゃん 僕だとわかるかな

かあちゃん 見ていてくれたかな
かあちゃん 僕だとわかるかな
手を引き川沿い歩いたら
かあちゃん 空みて歌ってる
かあちゃん 空みて歌ってる
×