ちゃっきり金太の唄

『あっしや札付きの巾着切りだが、決してあこぎな真似はしやァしねぇ。
だがこりゃ、あんまり自慢にやならねえや』

お江戸見すてゝ旅鴉
足の向くまゝ 歩くまゝ
追はれて箱根の峯越えりゃ
富士のお山が呼びかける
テナこというけど わしやつらい

『あっしの商売にゃ女は禁物だ、腕が鈍るからね。
だがこりゃ、チツト悩ましいや』

宿の浮寝のツレヅレに
フト侠気が縁の糸
みだれて胸もトキメケど
女嫌ひの意地ツ張り
テナこというけど わしゃつらい

娘ごゝろの一筋に
燃ゆる想いは響けども
答える胸の火は冷めて
帰る袂に小夜時雨
テナこというけど わしゃつらい
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