悪夢

ヒールをコツコツならして タイトなボディをゆらして
そっと悪夢が 見えかくれして
路地の角を曲がって ネオンの中に溶けて
ドアを開けたら すれ違った

おしぼりとかわきものが テーブルの上に置かれて
あの悪夢は 見当たらなくて
この道長そなママが 浪曲のような声で
あたしも飲んでもいいかしら

マツゲがとれそな 化粧も後半戦になったよな
芳香剤のような 香り

やたらとオデンをすすめる こいつが腹減ってんじゃネェの
冷蔵庫の冷凍室で できたような氷
一組みお客が立ち去り 担当していた方が
グラスを片手にこちらに向う

ドレスの胸もと割れた スリットやぶけてるような
右と左に逃げ場をふさぐ
ドレスのスパンコールが 各所はがれてる感じ
手の平も少しかゆくなる

もがけばからみつき しずかに座れつづけ
日の出の解放を 願う

見たくもないのに 前かがみを強調して
日の出の解放を 願う
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