人魚の檻

忘れないで 水に泳ぐ 此の髪を
憶えていて 眠りを断つ 其の意味を

現し身なら 救いもある
孰れ 終焉が 嘆きを 和ぐ
悲しみさえ 閉じて 濁る
此は 檻

幽棲からの 囁き 彼の 岸で 呼ぶ
哀号すらも 届かぬ 此の 岸に 独り

悠久なれば 安らぐ 老いらねば 好し
頓に 恐れた
愛するものが 川を 渡るを
渾て 御前を 蔑す
御為倒しの 夢

我 誰 澱に 憩う
別れを 忌う
【別たれ 檻に 今 乞う】
潤み色の 罪
永久に 死せぬ 我が身
溶きにし 曲水
【常磐に 死せぬ 海神】
思い遣らぬ 愛

命の 絶えぬを 善かれとするが 馳走なら
己が 喰らえよ

惘るほど 愚かし
人魚の 臠 謀りて 饗ふ
徒に 傲った
愛するものに 永久を 与うと
其が 御前を 奪う
人の 生きる 世 から

我 誰 澱に 憩う
別れを 忌(う
【別たれ 檻に 今 乞う】
潤み色の 罪
永久に 死せぬ 我が身
溶きにし 曲水
【常磐に 死せぬ 海神】
思い遣らぬ 愛

溢れる 嘆きを 集めて 深き 水に 問う
終 無き 此の身を

忘れないで 水に溶ける 此の貌を
憶えていて 二人を裂く 其の罪を

幾久しく 貴方を 待つ
水馴りて
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