虚空太鼓

瀬戸の島々 ほのぼの暮れて
かもめとろとろ 夢見頃
どこからともなく きこえてくる
虚空太鼓の 撥(ばち)の音(ね)は
浮かれはじめは 面白く
やがて悲しい人の世の
夏の花火に 似たさだめ
諸行無常と 鳴り渡る

若い命を 瀬戸の渦に
すてた一座の 物語り
宮島祭りが 近づけば
虚空太鼓に おもいだす
西へ響いて 母を呼び
北へ戻って 父を呼び
波に消えゆく 踊り子の
赤い小袖が 目に浮かぶ
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