夜の中へ

最終列車が長い光の列になって 遠い陸橋を渡る頃
もう帰る手だてのないふたりは この川べりで
夜と誰よりも親しい友達になる

川のせせらぎが聞こえる そっと
風の笛を耳元に響かせて
散らばった空き缶と 白い泡の流れる川辺で
夜と遠い夢と 疲れない愛を持って

すべてが今すぐ 叶う気がした
ふたりはどこへでも 行ける気がした
行くあてもない あたたかく甘い
風が吹く夜の中へ

川の向こうにゆれる ひとつひとつの灯りは
涙や痛みや 微笑みを静かに包んでる
夜の中では みんな 同じくらい自由だね
明日までの長く重く 遠い旅を続けてる

すべてがいつかは 消える夢でも
ただひとつの祈りが届かなくても
あきらめはしない 果てしなく遠い
夜を越えてゆけるまで
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