月夜

この透明な夜に
ただひとつ浮かぶもの
夢を見せてくれる
淡い色の月だけ

欠けてしまった何かを
埋めるために飛び込んだ
「今」さえ感じられれば
もう何もいらないと思って

人込みに囲まれて
あたたかい静寂の中
甘い夢に溺れて笑う人々
孤独さえ癒すような
場所をただ求めながら
この街で朝を迎える

壊れ傷ついた時間に
体を預けてみた
よみがえる昨日の残像
影との鬼ごっこに疲れて

見せかけの優しさも
嘘だらけの言葉だって
わたしには綺麗だと思えたんだ
逃げられない、わかってた
いつだってそう知っていた
それでも信じたかった

月の影が落とされた夜
見つけて、誰か見つけて
今夜はまだここにいるから
ずっと待っているから

気付いてよ、気付いてよ
まだ抜け出せないんだ
見つけてよ、見つけてよ
それだけでいいから

月の夜、何もかも
消えてしまった夢の余韻
囁いた声が誰かもわからず
夜が来るはじまりを
知るすべなどないならば
朝の訪れもわからないよ
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