小隊長の日記

光は闇に 目は土に
早暮れなずむ 森隠れ
シンガポールは指呼の中
覚悟の待機 銃と剣
沈黙(しじま)に兵が 意気猛し

敵前上陸 敢行の
時、数刻に 迫りたり
一髪土に 残さじと
決死に燃ゆる 部下の前
我感激の 涙のみ

心を水のごと 澄ませ
生死を越えて しばし聞け
或るいは高く 咽(むせ)び来る
或るいは低く 滲み寄る
無弦の琴の かの調べ

天皇陛下の おん為に
立派に死ねと 訓示せる
小隊長の 我もまた
卒先これを 躬行(きゅうこう)し
最後を飾る 華たらん
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