カフカの城

信号をいくつ曲がっても
ハンドルを何度きっても
行きつかないどこへも
とどまれないどこにも

来たことのないどこかの半島
海のにおいする街に独り
なにもすることがない
きみがぼくを忘れたいま

吹けば飛びそうに軽くなってゆく
気持ちをどこかに置き忘れた
からっぽになった中身のない箱
しまう場所がない 片づけられない

ぼくはカフカの城にいた

蜃気楼の街を歩き
帰る道も消してしまった
きみに開けられた穴が
ふさがらない胸おさえて

吹けば飛びそうに軽くなってゆく
いのちは零れて乾いてしまった
からっぽになった真空の肺
冬の低気圧にへこまされた

生きている軽さに挑み
背筋伸ばして歩き出そうと

きみがぼくを忘れたいま
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