檸檬

空席見つけ 向かい合わせたひと
窓の外は はるか緑
どことなく二人 ぎこちなくて
景色だけ 見ているよ

ひと駅ごと 減ってく乗客
笑い声ごと 遠のいていくと
余計気になる 目の前のひと

ふいによぎる さわやかな香りに
視線移す 君の手元
檸檬がいくつか 籠の中に
重なって 輝いて

ひと駅ごと 強くなる香り
降りる支度を し始めた君の
仕草すべてが とても気になる

伸び上がる しなやかな 背筋から
指先まで見つめ 引き止めたい衝動

少し目の前が 寂しくなる
景色さえ 色褪せる

外はずっと のどかな風景
終点までの 道のり道連れ
檸檬の君の 甘い残り香
甘い残り香
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