お吉ざんげ

国のためだと 騙されました
こんなお吉に なりました
銀鋲緞子(ぎんびょうどんす)の 飾り駕籠
死ぬ気で通った 玉泉寺(ぎょくせんじ)
惨(みじ)めな 惨めな女に なりました

「みんないつの間にか居なくなってしまった。
わたしひとり生きてるなんて、まるでボロ布れだけが
残って入るようなもんだよ。もう、なにも言いっこなしさ。
女の過去なんて、明日になりゃ消えてしまう……
わたしなんか、その明日さえないんだからねぇ………」

赤い椿が ぽとりと落ちた
花の運命(さだめ)の はかなさは
わたしの鏡が 知っている
十八 十九の おもいでを
返して 返しておくれよ もう一度

「世の中信じられなくなったら、なにもかもおしまいだよねぇ………
もう、泣くのも飽いた。生きるのも飽いた。生まれて育って
死んでく街……下田のお月さん、お願いだから二度と
「お吉」のような女は生まないで下さいよねぇ……」

下田港の厄介ものと
陰で嗤(わら)われ 罵(のの)しられ
どうすりゃいいのさ この先は
わたしの心の かくれ場所
教えて 教えて下さい お月さま
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