クジラの夢

子供の頃読んだ童話には
もうひとつの世界があったんだ
僕は翌朝旅に出た
貯金箱と大事な本をいくつかもって

ゆらりゆれる太陽のかげ
雲はまぶしく光る
おじいさんにもらった
パンをかじったら

クジラの背中に乗って海をゆこう
裸足のまま 空は気まぐれ
海水のメロディ 泡のようにじゃれよう
日は昇る そんな奇跡を胸に抱いて

風に飛ぶ麦わら帽子で
君に気がついた昼下がり
首にぶら下げたハーモニカ
旅の理由を聞かせておくれよ

まわるまわる星座の夜に
君とクジラの鼓動
黄金の月を指で
つまんで笑ったよ

オーロラの中を 漂うオリオン
砂の灯台 やわらかい言葉
星屑をくんで空きビンに詰めて
さあ行こう 物語は果てなくつづく
クジラの背中に乗ってどこまでも
僕のまま朝はくるだろう
あの頃の夢は色あせないまま
昨日のように今日も僕は旅に出る
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