夢虫

かげろふ 野辺に揺蕩えど
瞬く刹那の恋を手繰り
後世に渡す白糸は
宿世を希みて翅に纏る

祷りは 夜を籠めて 月を染むる
樹々に花に水に 青は満ちる
生まれ落つ命と 果てる命は
同じ雨に濡つ 運命と知り乍ら

靄に霞む 玻璃の眸は
遠き空を 見放きて 堕つる
水に散りそむ花の様に
その身は解けて 流る

嗚呼 夜は更け往く
夢路に独り 翅を閉じて
愛しむ歌さえ 歌えぬ時の果無さ

嗚呼 夜は明けぬる
夢路に火取り 翅は朽ちて
愛しむ歌さえ 遺せぬ時の果無さ

かげろふ 野辺に揺蕩えど
瞬く刹那の恋を手繰り
後世に渡る翅の音…
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