水仙岬

振り向くたびに 爪立ちすれば
足袋の鞐が 痛くなる
あなたを 見送る
女 越前 水仙岬
春呼ぶ花が 咲き競うのに
私の心は 春知らず――

女のいのち 三日に込(こ)めて
燃えて乱れた いで湯宿
別れに選んだ
女 越前 水仙岬
命を賭けた この恋だけに
大事にしたい 想い出は――

手櫛(てぐし)でやっと まとめた髪を
風がひと吹き また解(ほど)く
未練がからまる
女 越前 水仙岬
春呼ぶ花が 咲き競うのに
私の胸は 冬つづき――
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