おしどり笠

かえる燕か また来る雁か
男なりゃこそ 一本刀
追うてくれるな 気まぐれ旅を
浮名散らしの 風が吹く

好いちゃなるまい 好かれちゃ困る
どうせ気ままな街道ぐらし
富士の朝空 横目で仰ぎゃ
昨夜夢みた夢 胸に浮く

一夜二夜(ひとよふたよ)と 袖すり合えば
いつかからむよ 思いの糸も
口でけなして 心で惚れて
道中合羽の 裏表

京に出ようか 浪花へ行こか
人も振り向く おしどり笠よ
明日の塒(ねぐら)を 草鞋(わらじ)に問えば
あいと答える 眼が可愛い
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