空に三日月 帰り道

雨上がりのアスファルトが
湿った記憶を呼んで
口笛で誤魔化している
一足毎、移り変わる心の風景を
宵闇が塗込めてゆく
絶妙にズレてる
完璧に引き剥がされてる
明らかに狂ってる
それでいてあまりにも
ナチュラルな穏やかさ

燃えているように見える地平が
夏の終わりを告げるサインを
空に向かって投げ返している

何も知らぬ 何も言わぬ
ただバスを待っている
次のバスを待っている
古い傷をシャツで隠し
呼吸を数えたり
爪先を眺めたり
関係は捩れてる
交信は閉ざされてる
とっくに壊れてる
それでいてあまりにも
ナチュラルな立ち姿

濡れているように見える路面が
ドブ川のように見える路面が
暗い明日を映し出している

いずれ消えるか 消えざるか
空に三日月 帰り道
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