夕月船頭さん

葦の葉陰の よりきり泣くじゃない
なにが哀しうて 啼くのやら
筑波くもれば 明日は雨か
月が笠着りゃ 櫓も重い
利根の船頭さんはヨー 目になみだ。

あの娘としごろ お嫁に行ったろか
潮来通いが つらくなる
男ざかりを 流れのままに
暮らす稼業も 親ゆずり
若い船頭さんはヨー 泣きたかろ。

ひとりぼっちで 暮らしているときは
赤い灯を見に 旅もする
あつい泪が 水藻に落ちて
唄もせつなく 櫓が鈍る
夜の船頭さんにヨー 霧がふる。
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