母の便り

暗い夜業(よなべ)の 灯(ひ)の陰に
そなた案じて 筆とり候
秋の祭りの 太鼓の音も
一人わび住む 母なれば
なまじなまじ なまじ白髪(しらが)の
ますのみに候

結ぶ夜毎の 夢さえも
遥か都の 空にて候
よるべなき身に さぞやの苦労
離ればなれの 悲しさは
思い思い 思い届かず
もどかしく候

老いの繰り言 たどたどと
便り書く手も 凍えて候
飾る錦は 何ほしかろう
親子二人で 水いらず
暮す暮す 暮すのぞみに
すがり居り候
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