全男子に「今のうちにちゃんと言葉にしておけ」と言いたい。

―― 今作のアルバムタイトルは『soon』は“すぐに”や“もうすぐ”という意味の言葉ですね。

はい、これはプラスの意味に取っていただけたらと思います。ライブのMCでも言っているんですけど、僕らは“誰かを応援するバンド”じゃなくて“みんなに寄り添えるバンド”でありたいので。だから“すぐに寄り添ってあげる”とか“すぐに近くに”みたいな意味を込めてこのタイトルにしました。

―― また、今作の収録曲はわりと“時間の経過”が描かれているように感じました。

そうですね。僕としては、前々作の『my』と前作の『take』と今作の『soon』で三部作のつもりなんですね。で、これまでのアルバムでは失恋直後の頭がいっぱいな状態が歌詞になっていることが多かったと思います。でももう、1枚目から3年も経つし、僕自身の感情もどんどん変わっているので、今回は一歩引いているというか、僕も変わってきているけど、君はどうですか?というような想いがありますね。ようやく少しずつ立ち直ってきたということです(笑)。その辺の心の動きも楽しんでもらいたいですね。

―― そんななか、誕生日にフラれる心情を描いた、1曲目「12月29日」は“リアルタイム感”があります。ただ、前作の「Shunari」という曲には<誕生日にフラれかけた事も>というフレーズがあり、今作とリンクしているということなのでしょうか。

そうなりますね。だから、時系列的に「12月29日」のほうが「Shunari」より過去のことなんです。ぶっちゃけて言っちゃうと、本当に僕の誕生日である12月29日にフラれて、その実体験が「12月29日」の歌詞になっているんですけど、それから僕が必死に立て直したわけですよ(笑)。同じひとに向けて書いている曲ばかりなので、そういう歌詞のリンクは多々あると思います。あと僕はそういう“伏線”を仕込んでおくことも好きで、それを回収できるのも面白いなと思っております。

―― でもせっかく「12月29日」の危機を乗り越えたのに、やっぱりまた別れてしまったわけですね。

そうなんですよねぇ…。まぁ長く付き合っていると、いろいろありますよ。どの曲がどの曲にどう繋がっているのか、僕がすべて種明かしし過ぎちゃうとつまらないので、是非みんなにいろいろ想像してほしいですね。

―― この歌のラストは<伝わっていないけど特別だったのに>と終わっていきますが、これまでのreGretGirl楽曲を振り返ってみると、やはり別れの原因はすべてこの<伝わっていない>ことだったような気がします。

…はい。僕ねぇ、みんなに恋愛面で重たくて女々しいやつだと思われがちで、それは仕方ないんですけど、実は付き合ってしまうと淡白なところがありまして(笑)。別に僕はそういうつもりじゃなかったんですけど、相手が「もっと構ってほしい」みたいなときに、冷たく感じられてしまうことが多かったみたいで。そういうのを別れ際に言われて初めて<伝わっていない>ことに気づいて<特別だったのに>と思うんですよね。

―― 歌からはこんなに“好き”が伝わってくるのに…。

いやー、これはやっぱり男あるあるなのかなと思うんですけど、終わってからいろいろ本音を言い始めるんですよね。付き合っているときは、大切にしないくせに。あとからあとから想いが出てくるわけですよ。本当、失ってから気づくことがめっちゃ多いですね。意識していたつもりだけど、全然できてなかったんだって、最後の最後に言われてハッとするみたいなのが毎回です…。だから全男子に「今のうちにちゃんと言葉にしておけよ」と言いたいです(笑)。

―― 2曲目「白昼夢から覚めて」は、先ほどおっしゃったような、時間の経過による“僕の変化”が伝わってくる1曲ですね。

これは『my』で「デイドリーム」という曲を書いたんですけど、その続編の「デイドリーム2」という感じですね。だから歌詞の内容のリンクも意識しました。「デイドリーム」では<僕の知らない誰かに 僕の知らない君をみせないで>と“君が変わってくのが嫌だ”という気持ちを描いているんです。でも今回は逆に“僕が変わっていってもいいのかい?”という歌にしてみました。最後に畳みかけるように。まぁこんなこと歌っているということは、全然吹っ切れてはないですよね(笑)。

―― 3曲目「キスの味」には百人一首が引用されていますね。意味は『あなたのためなら捨てても惜しくはないと思っていた命でさえ、あなたと逢うためにできるだけ長くありたいと思うようになりました』という。

あんまり短歌を歌詞に引用しているラブソングってないなと思ったので。そんなに百人一首に詳しいわけではないんですけど、この一首はなぜか僕のなかに残っているというか。結構、重たい意味が込められているじゃないですか。その感じがめっちゃreGretGirlぽいなと思って(笑)。勝手にシンパシーを感じて気に入ったので、使わせてもらいました。

photo_01です。

―― この歌の<気づいていたのに無視をしていた>というのも、reGretGirlあるあるではないでしょうか。

そうそう。付き合っていたら、なんとなく向こうの気持ちが僕から離れているなぁ…みたいなのがわかるんですけど「まぁいつか時間が解決してくれるだろう!」と思うんですよ。そして別れを告げられてから<気づいていたのに無視をしていた>と気づくわけです。さらに、僕がバカなだけかもしれないですけど、恋愛においては、昔の失敗を気づかないうちにまた繰り返してしまうことが結構あるんですよね(笑)。その結果、いくつも<因果応報、自業自得>な歌詞が出来上がります。

―― 4曲目「soak」は“浸る”という意味のタイトルで、時間が経っても<まだ忘れられないほどの恋に浸ってる>未練が歌われております。

これはアップテンポな曲なんですけど、アルバムのなかに1曲はアップテンポでちょっと短めの曲を入れたいなと思って。前々作の『take』では「after」、前作の「my」では「replay」、そして今作ではこの「soak」がそのシリーズとなっていますね。三部作なので、タイトルも英単語で揃えて作ってみました。

―― この歌はとくに平部さんが歌うとリアルですね。<こうやっていつまでも自分の事 歌われる気分はどう?>ってなかなか…。

なんかもうアップテンポな曲だから、勢いに任せて、結構なことを言っちゃいました(笑)。時を経たことで、いよいよ逆切れっぽくなってきてますよね。まぁでも曲調も明るいので、これくらい言っても許されるかなと思って書いてみました。正直、もう帰ってくることはないってわかっているからこそ、ここまで言っちゃっているところもあると思います。こういうフレーズを歌えるのは、バンドマンである僕の特権ですね(笑)。

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