― ボカロPの方々が集まるような会はよく開かれるものなのでしょうか?
buzzG:4~5年に1回ぐらい。
ねじ式:buzzさんは主催者だよね。何人ぐらい集まるんだっけ?
buzzG:180人ぐらい。
― 多いですねぇ!
ねじ式:そうなんですよ。あの場所がきっかけで、いろんなボカロPと知り合ったり、「ずっと前から聴いていました」というやり取りがあったり。
buzzG:ボカロPって、派閥もとくになく、みんな普段はソロで活動していて。たまたま機会があったら、ふらっと集まるようなひとが多い気がします。でも、ボカロPで集まっても音楽の話なんてほとんどしないんですよ。くだらない話ばかりで(笑)。だからこうして改まって曲について話す機会は新鮮ですね。
Heavenz:とはいえ、昔のほうが交友関係は幅広かった気がします。最近は、仲いいひと同士で集まりがちというか。
ハヤシケイ:ボカロ界隈の裾野が今ほど幅広くなかったですし。
Heavenz:同人会感があったよね。
ハヤシケイ:そうそう、全ボカロPが集まれるぐらいの規模だった。今はもう多すぎて、どうしてもクラスター化していくところはあると思います。
― 同人会感があったのは、いつ頃のことなのでしょう。
ハヤシケイ:2008年~2009年ぐらいかな。
buzzG:2009年くらいからバーッと増えていった感覚はありますね。とくに2009年は、米津玄師(ハチ)くんとか、wowakaさんとか、ピノキオピーさんとか、その後の世代に影響を与えるようなカリスマ的なボカロPが出ていますし。
ハヤシケイ:2008年頃は、「ボカロブームなんて、あと半年で終わる」と言われていたのに。
buzzG:なんなら毎年言われているよ(笑)。
ねじ式:でも今、終わってない。むしろ盛り上がっている。2009年からのブームがいったん去って、オワコン化してきたと思われていた2013年頃に、僕は初投稿したんですよ。あの頃はもう荒野(笑)。「思い出すとツラい時期」だとみんなが言いますよね。
― そのなかでトレンドの変化などもありましたか?
ねじ式:最初はボカロって、初音ミクとかキャラものが主流だったんですけど、2013年頃になると、歌い手さんによる「歌ってみた」が人気になっていった印象があります。歌い手さんが歌って、楽曲が伸びていく。そして、その歌い手さんがホールクラスでライブをやるようになり、商業的に成功して、ボカロPに楽曲依頼をするという流れができていきましたね。僕も自分のリスナーが拡大したきっかけは、歌い手さんでした。
buzzG:本当に2007年、2008年とかは、キャラ人気だったよね。でも、ケイさんは初期から、そういうところから少し外れたものを作っていませんでした?
ハヤシケイ:そうですね。2007年は初音ミクが歌唱する「メルト」や「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」みたいな名曲があったから、“キャラソンでなければいけない”みたいな空気もあって。でも、2008~2009年になると、元バンドマンみたいなひとたちが、「バンドが解散して暇だから始めます」と入ってきたんですよ。それでバンドっぽい曲やメッセージ性の強い曲が増えていった影響は受けていると思います。今はさらに多様化が進んでいて、もはやひと言でトレンドを説明できませんが。
ねじ式:Heavenzさんも、もともとはバンドをやっていたんですよね?
Heavenz:一応、拙いキーボードを弾いていました(笑)。でも、バンド上がりではありますが、どちらかというと打ち込みありきですね。当時、バンドをやっている一方で、ボカロも始めて、ボカロのほうが売れて流れていったひとは多かったと思います。
buzzG:そう考えると今は、最初からボカロPになりたいひともいるから、時代が変わったよね。
ねじ式:うん、ボカロPになりたい若い子はギラギラしている。バズらせるための歌を作ったりしていますもんね。
ねじ式:僕は曲先が多いんですけど、30曲に1曲ぐらい詞先がある感じなんです。みなさんの曲づくりの過程はなかなか聞いたことがないから、訊いてみたいなと。
Heavenz:僕は完全に曲先ですね。歌詞はアレンジも終わって、音源が完成して、ラララだけが乗っている状態になってから書き始めます。そのほうが音の世界観が歌詞になってくるので。
― 曲づくりの段階で、なんとなく景色は見えているものなのでしょうか。
ねじ式:わかります。暫定でも決めておきたいですよね。
Heavenz:タイトルって曲の顔ですからね。検索してタイトルが被っている曲がないかどうかもチェックします。ボカロはわりと思いつくことが似ているじゃないですか。ファンタジー的なキーワードだったり。歌詞を書く前に相当、考えます。
buzzG:僕も曲先ですし、アレンジまで全部できてから歌詞を書きます。まわりを見ていても、ボカロで詞先のひとは珍しいんじゃないかな。詞先だと、メロディーとの整合性を取るのも難しいし。
ねじ式:僕は逆バージョンで、「歌詞がこういう世界観だから、こういう楽器の音色にしよう」というパターンもあるんですよ。
ハヤシケイ:僕は珍しい詞先タイプかもしれません。まずタイトルやテーマを先に決めて、思いつくことをバーッと文章で書くんです。それを歌詞っぽく構築したあとに、メロディーをつける。さらに、メロディーにあわせて、どんどん歌詞も変えていく。アレンジはいちばん最後です。
ねじ式:ケイさんはとくに歌詞がいい曲、多いもんな。
ハヤシケイ:僕の場合、アレンジまで決めた状態から歌詞を書くと、逆に広がりを持たせられなくなってしまうんですよ。「サビに行く前に、もうひと言ふた言、書きたい」とか、「Bメロをあとひと節だけ伸ばしたい」とか、途中で出てくることも多いし。そういうときにドラムフィルとかまで決まっていると、修正がきかなくて追い込まれてしまいます。
― みなさん歌詞を書くとき、どこにいちばん難しさを感じますか?
ねじ式:アクセントの置き方かな。読むだけだと単純な言葉も、メロディーの組み合わせによって、ものすごくキャッチーなフレーズにも、聴き取りにくいフレーズにもなり得るから。意味よりも、アクセントの置き方のほうを優先させるときもあります。
ハヤシケイ:ああ、聴いたときにキャッチーなものかどうかの判断は本当に難しいですよね。僕は、「本当に言いたいことを言い切れているか」というところも悩みがち。自分勝手に書くだけなら楽だけれど、「聴くひとのことを考えると、違う伝え方のほうがいいかな」とかもすごく考えるので。しかも、考えても出ないときは出ないから、作詞がいちばんしんどいかもしれない。
ねじ式:うん、翌日に持ち越すことがよくある。
ハヤシケイ:湯水のように湧くものではないじゃないですか。毎回、乾いた雑巾を絞るような感じ。メロディーや編曲は、なんだかんだ手を動かしていたら進むことが多いけれど、歌詞は一生終わらない気がする(笑)。
buzzG:たしかに、歌詞だけでものすごく時間かかること多々ありますね。「前も同じことを言っていたかな」とか考えてしまうし。あと、自分の場合、妄想だけで完結しているものを書くのは難しい。だから、身体性の再現について、悩みがちかもしれない。
ねじ式:身体性の再現?
buzzG:自分自身が身体を通して体験した世界を、どれくらい歌詞に盛り込むか、というか。
― みなさんはどれぐらいご自身のことを歌詞に入れますか?
ハヤシケイ:少なくとも、思ってないことは言わないようにしていますかね。
Heavenz:僕もあまり嘘をつかないところはあるかも。
ねじ式:嘘をつくと、曲が弱くなる気がしますよね。だから、100%実体験ではないが、「自分がこういう局面に立ったら、こう思うだろうし、こう行動するだろうな」というところはブレずに主人公像を作っているかな。
buzzG:強いて思ってないことを言うときがあるとしたら、誰かに提供するとき。そのひとに合わせていると、自分とは別の視点が生まれてくるから。
ねじ式:みんな楽曲提供をよくやっていらっしゃるけれど、どうやって歌詞を書いているんですか?
ハヤシケイ:僕は、提供する歌い手さんやアーティストさん、キャラクターのことを“原作”だと思っていますね。だから、調べたり、本人と話したりして、人となりや考え方、「こういうことを伝えたいんです」みたいなことをよく知るようにしています。楽曲提供であっても、自分自身が思ってないことは書かないけれど、あまり押し付けるのもよくないかなと。相手とよくすり合わせるようにしています。
buzzG:僕も近いです。たとえば、配信とかもよく観ます。そのひとのことをものすごく好きになってから書きたいので。「そのひとはどういう気持ちで、何をやっているのか」みたいなところまで想像して書くと、自分の思ってない言葉が出てくる場合もあるかな。
Heavenz:やはり、そのひとのコンセプトやテーマはうまく入れ込みたいですよね。そのために僕も、口癖やモチーフの元ネタまでかなり調べます。それでファンの方が、「これって実はこういうことじゃない?」って気づくようなオシャレな入れ込み方ができたら、いい曲になるかなと。毎回、愛情を持っていますし、「大事に作ってあげたいな」という気持ちが生まれますね。