いつ失うかわからないからこそ。“日常”をテーマにした新たなラブソング!
 2025年7月5日に“SIX LOUNGE”が新曲「かまわないよ」をリリースしました。夏にぴったりな清涼感溢れるギターサウンドが特徴のミドルテンポのラブソング。今回は、作詞を手がけたナガマツシンタロウ(Dr.&Cho.)にインタビューを敢行。歌詞を書くうえで、大きな信頼を寄せるヤマグチユウモリ(Gt.&Vo.)の歌声の魅力。これまで“怒り”を切り取ることが多かった自身が、穏やかな“日常”をテーマにした理由。そして、「最近、昔のように強気で行けなくなってきた」というマインドの変化。作詞の軌跡から新曲への想いまで、じっくり伺いました。今作とあわせて、歌詞トークをお楽しみください。
(取材・文 / 井出美緒)
かまわないよ作詞:ナガマツシンタロウ
作曲:ヤマグチユウモリ
そろそろお風呂に入ろう
スキンケアもうあと少しだよ
もらったみかんを食べようよ
歯を磨いたらゲームしよ
ただあなたの側にいて
こんな感じで最後まで
それ以上はなくたって
かまわないよ
かまわないよ
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ユウモリの声が強いから、俺はのびのび歌詞を書ける。

―― シンタロウさんには「今日のうた」に多くの歌詞エッセイを執筆いただき、ありがとうございます。あの原稿には、歌詞になる前の感情や体験を綴られているのでしょうか。

それが多いですね。SIX LOUNGEの制作は、曲先が多いんです。すると、“メロディーにハマる言葉”という面を優先させるので、入れたかったけれど入れられなかったフレーズや言い回しがいっぱいあって。そこをああいう形で消化させていただいています。ただ、いつもあとから自分で読み直して、「暗くない?」って思います(笑)。

―― まず原点の部分をお伺いしていきたいのですが、人生で最初に音楽に心を動かされた記憶というと?

ドラムを始めるきっかけにもなった、QUEENの存在が大きいです。歌詞の面でもかなり影響を受けています。フレディの歌詞は、和訳でしかわかりませんでしたけど、隅っこのひとりに対してもちゃんと届けてくれる。派手で大スターなのに影があるんですよ。だからこそ、ひとの孤独や寂しさを知っている気がして。俺が小学3年生ぐらいの頃から、ずっと大好きです。

―― SIX LOUNGEでは、ヤマグチユウモリ(Gt.&Vo.)さんが作曲を、シンタロウさんが作詞を担当されるパターンが多いですが、それはバンド結成当初から変わらないスタイルでしょうか。

そうですね。子どもの頃からバンドはやりたかったけど、まさか自分が歌詞を書くことになるとは思いませんでした。日記やポエムも書いたことなかったし。高校でユウモリに出会って、バンドを組んで、ふたりで曲を作ることになって、初めて歌詞というものを書いたんですよ。ユウモリが、「歌詞は恥ずかしくて書けない」と言うから(笑)。俺も未経験だったけれど、興味はあったからやってみたら、意外といけるんじゃないかと。

―― いちばん最初に書いた歌詞は覚えていますか?

それがどの曲だったか覚えていなくて。最初に自分らで作ったデモに、音源としては残っていると思います。書いている歌詞は今と何か違ったのかなぁ…。曲によっては、形だけの歌詞みたいなものもあった気がします。自分の気持ちを書くというより、今まで聴いてきた歌詞を参考に、「こんな感じかな」とワードを乗せるだけ。でも俺は喋ることが得意じゃなかったから、作詞は合っていたんだろうなと改めて思いますね。

―― ただ、歌うのはユウモリさんというところで、歌詞の主人公像はどう擦り合わせているのでしょう。

Photo by アサイチカコ

最初はまったく考えていませんでした。そして、途中からそういうことも意識するようになったんですが、考えるとむしろ書けなくなることが多くて。今はもう無意識に書いています。「これが俺ららしいだろう」というより、「これはないだろう」という感覚ならわかるので。

あと、多分ユウモリの声が強いんですよ。何を歌っても、他のアーティストのカバーをしても、その感情や世界観を自分のものにできてしまう。男らしさもあるけれど、それだけじゃない。弱さや脆さも表現できるボーカルだと思います。気持ちがまっすぐ届くんですよね。だから、俺はのびのび歌詞を書けるのだと思います。

―― 活動のなかで、“らしさ”が確立されたと感じたタイミングはありますか?

らしさか…、どうなんやろう。それがどんなものか言語化するのは難しいけれど、『THE BULB』というアルバムを出したあたりかもしれません。なんとなくバンドの空気感や軸が固まってきて、自信がついたというか。環境も関係していましたね。メジャーデビューを経て、そこから何年か経って、いろいろ経験したタイミングだったから。とはいえ、今も書けるときは書けるし、書けないときはまったく書けないんですけど(笑)。

―― 歌詞はどのように見えてくるものなのでしょうか。

曲先が多いので、ユウモリから曲をもらって、まずそのメロディーやコード感からテーマを考えていきます。そして、ノートにバーッと書き出して、サビのフレーズとしてはまるワードを見つけて、組み立てていく。何も見えてこなければ、過去のメモを掘り返して、アイデアを探したり。

―― たとえば、より多くのひとの耳に届くこととなった楽曲「リカ」は、<リカ>という名前をフレーズに入れようと決めていたのですか?

いや、あれはメロディーから聴こえてきたんだと思います。多分、ひとの名前を使おうと最初から考えていたわけではない。高3ぐらいで作った曲で、まだ最初のころに書いた歌詞でした。

―― 「リカ」が高3で生まれていたとすると、早い段階から“らしさ”は確立されていたのかもしれませんね。

ああ、たしかにそうかもしれないな。今のほうがよくも悪くも考えることは増えたけれど、やっぱり考えすぎるほど“らしさ”からは遠ざかることが多いというか。俺の場合、自分が迷子になるんですよ。何も考えてないときのほうが、「リカ」のような勢いある楽曲が生まれている気がします。それこそタイアップ楽曲だと、よりいろいろ考えるべき要素が多いから、最初はめちゃくちゃ難しかったです。

―― 0から作るのと、タイアップ楽曲として何かお題がある状態から作るのと、どちらが作りやすいですか?

難しいなあ。正直、作品や商品によります。アニメ主題歌とかだと、作品のストーリーのなかに自分とリンクする部分を見つけられる場合が多いので、書きやすかったり。

―― タイアップが関係ない場合は、どんなときに曲ができることが多いですか?

「よし、やるぞ」って机に向かっても、なかなかできることはなくて。日常のなか、無意識の状態でふっと出てきたアイデアが、のちほどいい歌詞になることが多いです。たとえば、料理しているときに、よく欠片が生まれます。なので、普段からすぐにメモする癖がついていますね。

―― ちなみに、歌詞に対してメンバーのみなさんは何か意見や感想をくださることは?

いいえ、まったくありません(笑)。

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SIX LOUNGE
新曲 『かまわないよ』
2025年7月5日配信
エピックレコードジャパン