―― Uruさんはご自身が人生でいちばん最初に書いた歌詞って覚えていますか?
本っ当の最初は中学生のときで、その日に授業で習った「every day」という英語を使いたくて書いたんですよね。それまでポエムとかも書いたことなかったのに突然、書いてみたくなって。ピアノで作ったオリジナル曲に歌詞をあてがってみた感じです。でもそれはワンフレーズしかなくて。ちゃんと最後まで書いたのは事務所に送ったデモ音源で、それがリリースもしている「今 逢いに行く」なんです。
―― ちなみに最近はどんなことを考えたり、お友だちと話したりすることが多いですか?
わりと暗い話題になってしまうのですが(笑)、「最期のとき」のことですね。どういう感じで意識がなくなっていくんだろう、とか。耳だけは最後まで聞こえるって本当かな、とか。経験者から話が聞けないことだからこそ、自分のなかですごく考えたり、想像したりします。
―― 2020年のメールインタビューで、これから挑戦してみたい歌詞についてお伺いした際も、「死生観というものを歌にしてみたい」と書かれていましたね。
そうなんです。私は多分、死生観に関するアンテナが人一倍、敏感で。というのも、父が早くに他界しているので、身近な人がいなくなることを子どもなりに解釈したんだと思うんですね。それがずーっと残っている感覚なんです。
―― また、2013年にご自身のYouTubeチャンネルを立ち上げられているので、活動歴は10年以上になるUruさんですが、そのスタートから今に至るまでのマインド変化をグラフにするならどんな形になると思いますか?
最初のほうはものすごく上下の激しい荒波ですね。自分の価値観というか、歌の世界観というか、なかなか軸が決まらなかったんです。そんななか、back numberさんの「青い春」に"あぁ私だ…"って共感した大好きなフレーズがあって。それが<自分を知った気になって また分からなくなる>という部分で。
まさに「私の歌はこれだ!」ってわかった気になっては、また自分で自分を裏切ってズドーンとなってしまう。その繰り返しで。でも活動していくなかで、徐々に自分らしさみたいなものを積み重ねていって、ようやくその波の上下が細かく緩やかになってきているかなぁと思います。
―― 歌詞に“Uruらしさ”ができてきたかも、と実感されたタイミングはありましたか?
曲で言うと「あなたがいることで」かもしれません。みなさんが私に求めてくださるもの、そして私が書きたいもの、ひとの温かみみたいなもの、すべてを歌詞に書くことができた気がして。
―― Uruさんは2017年「しあわせの詩」リリース時の取材では、ご自身にとって歌詞は気持ちや風景や物語を届ける役割や、聞いてくださった方が知りたい情報がたくさん入っているという意味で「ニュースの原稿と一緒です」と答えてくださいましたが、今はそれだけではなくより“祈り”が込められているようにも感じます。
たしかにそうです。人情に訴えるような、素直になれるような、気持ちを浄化できるような、そういう歌詞を書きたいと思うようになっています。エゴかもしれないけれど、自分の気持ちが誰かに少しでも作用すればいいなとも思います。
―― では、何かご自身の殻が破れたような転機の曲というといかがでしょう。
それこそ今回の「アンビバレント」ですね。「Break」も自分にとって挑戦ではあったんですけど、私の要素を多めに残したままでのアップテンポな曲だったので。でも「アンビバレント」は本当にすごく爽やかで華やかな、初めてのタイプの楽曲だったのでより勇気が要ったし、新たな扉が開けたなと思います。
―― ニューシングルのタイトル曲「アンビバレント」はTVアニメ『薬屋のひとりごと』第2クールOPテーマです。まさにUruさんの新たな一面に出逢える1曲ですが、どのような流れでこのアップテンポな楽曲に決まったのでしょうか。
今までは、バラードやアップテンポでも緩やかな曲が多かったので、「違うタイプのアップ曲を歌ってみたい」と以前から思っていたんですね。そういう面もお届けしたいというお話もインタビューなどでしていて。そんなときに「ぜひこのアニメのOP曲を」というお話をいただいて、私のデモ含めいくつかの曲の中からYASさん作曲のこの楽曲に決めさせていただきました。
―― 今までとガラッと異なるタイプの楽曲を歌うにあたり、意識されたことや発見はありましたか?
OP曲なので、これから始まっていく明るい感じを出すために、口を“横にひらく”ことは意識しました。そのなかでも私らしさを損なわないように。そういう面でも“Uruのアップ曲”を表現するって難しいなと気づきましたね。
でも聴いてくださったみなさんがすでに、「新しくていい」とか「今までにない感じ」とか「ED曲だと思ったらOP曲だったのが意外だった」とか、いろんな反応をくださっているので、挑戦してみてよかったなと思いますね。