「20-CRY-」を越える病みソングを書くのが今の目標。

―― ミリヤさんがアルバム収録曲のなかでとくに思い入れの強い曲を教えてください。

One Night Party」ですね。私が思う“私らしい”歌詞だなって。たとえば<美しいまま死にたい>ってフレーズとかも。老いることをそこまで不安に思っているわけじゃないけれど、音楽活動を10代、20代とやってきて、30代の今の等身大の気持ち。もちろん今がベストだけど、まぁ「美しいままがいいなぁ…」と思う、自分の素というか。<死んでもいいくらいに 愛されたい>みたいな世界観も私らしいと思うし、気に入っています。

―― オトナ白書」にも<綺麗なまま時よ止まれ>というフレーズがありますね。

そう、そのフレーズも好きなんですよ。「オトナ白書」も16歳だった女子高生が、今30代になって何を思っているか、みたいなことをテーマに書いたので。やっぱり<綺麗なまま時よ止まれ>みたいなことは普通に思いますよね(笑)。私は長生きしたい願望がまったくなくて、できれば自分が思う「ここが綺麗だな」ってところまでで…とかすごく想像するんです。そういう気持ちが表れていますね。

―― では、もう少し作詞についてお伺いしていきます。共作詞の場合はどのように歌詞を作っていくのですか?

まず私がぶわーって書いて、それを1回テーブルに並べて、歌いながら響きというか口当たりを調整していくんです。とくに今回のアルバムはサウンドを重視しているので、音的な気持ちよさも大切にしたくて。

日本語ってやっぱり音が引っかかっちゃう。かといって英語ばかりだと伝わりづらいし、せっかく日本で音楽をやっているからにはもったいない。だからギリギリのバランスを保つため、「ここは英語にしよう」とか「ここはこういう日本語に変えよう」とか意見をもらう感じですね。

―― ミリヤさんが書く主人公たちに、何か共通する特徴や性質を挙げるとすると?

欲ばり。私にとって<want>がモチベーションなんです。「これしたい」「あれが欲しい」「あそこに行きたい」みたいな。人生で絶対に失くしてはいけないものは<want>だと思う。欲がなくなったら上にあがれないから。それは私の母親からもいつも言われていて。「おいしいものを食べたい」とか「オーロラを見てみたい」とかなんでもいいんです。そういう欲求が強い女性像であることは一貫しているかなと思います。

きっと相手に譲ってしまいがちな子ほど、本当は<want>があるんじゃないかな。「欲深い」って、イメージが悪い言葉だけれど、自分の人生をよくするためにすごく大事だなってずっと思っています。だから私の歌詞には「欲しい」という言葉がよく出てくるんですよ。

―― 「欲」や「欲しい」をよく使う言葉だとすると、逆にあまり使わないように意識している言葉はありますか?

「愛」かな。よく使うからこそ、我慢しよう…って(笑)。「愛」って便利な日本語なんですよね。韻が踏みやすいし、語感もいいし、わーっと歌ってみたときにキャッチしやすい。だから、ここぞというときに、とは思っています。けどまぁどうしても「愛」は多くなっちゃいますね。

―― ミリヤさんにとって歌詞とはどういう存在ものでしょうか。

そうだなぁ…。やっぱり「救い」ですかね。自分自身が救いを求めて歌詞を読んでいたので。ライブで私の曲を聴いて泣いてくれるひとの気持ちもすごくわかります。曲のなかでは心がひらける。そこに「救い」があって、その先に自分の強さを取り戻せる時間があればいいなと思います。

―― 歌詞を書くときのマイルールはありますか?

自分にしかない表現だなというフレーズが、1曲のなかに1つでもあること。それがあれば納得できる。だけどそれって自分とすごく向き合わないとダメで、日常生活のなかで自分をその境地に持っていくまでがつらい。もっと深いところにいきたいのにゾーンに入れなくて、「あぁまた今日もダメだった。書けなかった」って時間だけが過ぎていくことがよくありました。とくに昔なんかもう壁と向かい合って、「できない…できない…」って(笑)。

―― 今はお子さんと過ごす時間もあるのでより大変ではないですか?

そう、リアルに時間がない! でもだからこそ、「あなたに与えられた時間はここしかないよ」って神のささやきが常にあるんですよ。それでおしりを叩いてもらって、昔よりスイッチが入れやすくなった気がします。

―― 時間が限られたことで、逆にスイッチを入れやすくなったんですね。

そのためにいろんな場所を試したんですよ。まずカフェとかは絶対に無理。小説を書くときにはいいんです。雑音があるから。でも歌詞は歌ってみないとわからないじゃないですか。だから家で書くのは必須で。

煮詰まるたびに場所を変えて、あえてダイニングのテーブルに座ってみたりしたんですけど、全然ダメ。結局落ち着いたのは、作業部屋の端っこの床に座って、ピアノのイスに自分のパソコンを置いて、あぐらをかく。そこが自分の神スポットですね。

―― また、現在は「CLUB TOUR」の真っ最中だそうですね。

人生初のクラブツアーですね。普段は私が寝ている夜中の時間に歌わせてもらっています。爆音で音楽を聴きながら踊りたいひとたちが来ていて、選曲もやっぱり踊れるセットリストで。しかもみなさまとめちゃくちゃ近い。普段のライブだとどうしても少し距離があるんですけど、触れる近さで歌えるのが新鮮で楽しいです。みなさま、ぜひ遊びにきてください。

―― ありがとうございます! では最後に、これから挑戦してみたい歌詞を教えてください。

先ほどもお話した「20-CRY-」という曲が自分史上最大のダークソングなんですね。それを越える病みソングを書きたい。何回かトライしているんですけど、なかなか書けていなくて。明るく楽しい素敵な曲は他のアーティストがいっぱい書いてくださるので、私のイメージならいっそ「もうこれ以上ないでしょ!」ってほどの病みの病みを書いてやろうと。それが目標ですね。いつか書けたときにまたインタビューしてください(笑)。

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加藤ミリヤ
NEW ALBUM『BLONDE16』
2023年4月5日発売
ソニー・ミュージックレコーズ



初回生産限定盤(CD+DVD+フォトブック)
SRCL-12470~12471 ¥5,000 (税込)



通常盤(CD)
SRCL-12472 ¥3,500 (税込)
収録内容
直筆色紙プレゼント

加藤ミリヤの好きなフレーズ
毎回、インタビューをするアーティストの方に書いてもらっているサイン色紙。今回、加藤ミリヤさんの好意で、歌ネットから1名の方に直筆のサイン色紙をプレゼント致します。
※プレゼントの応募受付は、終了致しました。たくさんのご応募ありがとうございました!
加藤ミリヤ

1988年生まれのシンガーソングライター。2004年のデビュー以来、リアルで等身大な歌詞とメロディセンス、生きざまが“現代女性の代弁者”として、同じ時代を生きる同世代女性からの支持・共感を集め続けている。

ファッションデザイナーとしても活躍する彼女の髪型やメイク、ファッションを真似する“ミリヤー”現象を巻き起こし、『VOGUE JAPAN WOMAN OF THE YEAR 2010』に選ばれる。現在は小説家としても才能を発揮。デビュー18周年では配信を中心に勢力的にリリース重ね、新しい表現に挑戦し続けている。
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