曲の主人公は僕自身と似ているようで程遠い人物。

―― カップリング曲「心層廃棄物」と「海洋生命」はどのように生まれた歌でしょうか。

両方ともNieR:Automataを意識して作りました。特に「海洋生命」はヨコオタロウさんの人形劇の脚本を読んで非常に感動したので、勝手に主題歌を作るような気持ちで書きました。

―― 「心層廃棄物」には<嘲笑と同じくらい 共感は粗暴で>というフレーズが、「海洋生命」には<傷を舐め合う時代は過ぎているとっくに>というフレーズがあり、どちらも“共感”に対するネガティブな印象を受けます。それは何故でしょうか。

これは僕の勝手な持論なんですけど、褒められても貶されてもどっちも同じくらい意味がないと思っているんです。特に自分の作品に対しては。自分が素晴らしいと思うものを生み出すことに価値がある。SNS時代において、手軽な評価に重きを置くことに違和感があるので、こういう歌詞になったんだと思います。

―― ご自身がとくに気に入っているワンフレーズを教えてください。

父さん母さんもう悲しくなんかありません 
泣きわめく代わりに慟哭を書き溜める
ここはゴミ捨て場 切望たちの墓場 
虐げられた同士達が集う洞穴
傷を舐め合う時代は過ぎているとっくに 
醸造された憤りを回し飲む同類

「海洋生命」のこの箇所はうまく書けたなぁと思います。鬱憤の溜まった人たちの感情が高まって爆発寸前に至る感じが気に入ってます。

―― これまでいろんな楽曲を書いてこられたかと思いますが、ご自身が描く主人公たちに何か共通する特徴や性質を挙げるとすると?

結局は僕の理想像というか、自分の中にある微かな力強い箇所を増幅させて書いているので、僕自身と似ているようで程遠い人物だなと思います。

―― 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?

最近は、詩をちゃんと読もうと思って詩集をよく読んでます。吉増剛造さんとか。「心層廃棄物」という曲のタイトルは田村隆一の「腐敗性物質」を意識しました。中身は違いますが。あと音楽だと日本のヒップホップを聴くことが多いです。

―― 歌詞面で影響を受けたアーティストはいますか?

難しいですね。amazarashiを始めた頃は日本の古いフォークソングをお手本にしていたんですけど(友川カズキ、友部正人、とか)、今では色んなジャンルのものがごちゃ混ぜになっていて、これだというものが見つかりません。

―― 最近、歌詞が良いなと思ったアーティストや楽曲を教えてください。

THA BLUE HERBのtha BOSSのソロ新曲「YEARNING」はやっぱりすごいと思いました。<ないなら作る いないならなる>って歌詞が奮い立たせてくれます。

―― 歌詞でとくに好きな言葉、作詞の際によく使う言葉はありますか?

結構、手癖とかあると思うんですけど、その辺はあまり気にしてません。昔書いた言葉でも必要なら使うべきだと思うし、使いすぎてるから今回はやめといた方がいいなと思うこともあります。意識して特定の言葉を使うということはないです。

―― 逆に、意識して使わないようにしている言葉はありますか?

人を傷つけそうな言葉はちゃんと自覚して、覚悟してから使うようにしてます。過去に書いて後悔してる歌詞もあるので。

―― 歌詞を書くときにいちばん大切にしていることは何ですか?

第三者は意識しないで、自分がいいと思うものを正直に書くことです。

―― ひろむさんにとって歌詞とはどんな存在のものですか?

自己表現、自己の発露です。

―― 最後に、これから新たに挑戦してみたいのはどんな歌詞でしょうか。

誰もやったことのない比喩で、誰もが「ああ分かる」と思うような歌詞を書いてみたいです。

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amazarashi
NEW SONG『アンチノミー』
2023年2月22日発売
ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ



初回生産限定盤(CD+Blu-ray)
AICL4336~4337 ¥3,080 (税込)



初回仕様[通常盤](CD)
AICL4335 ¥1,650 (税込)
収録内容
直筆色紙プレゼント

秋田ひろむの好きなフレーズ
毎回、インタビューをするアーティストの方に書いてもらっているサイン色紙。今回、amazarashi 秋田ひろむさんの好意で、歌ネットから1名の方に直筆のサイン色紙をプレゼント致します。
※プレゼントの応募受付は、終了致しました。たくさんのご応募ありがとうございました!
amazarashi

青森県在住の秋田ひろむを中心とするバンド。日常に降りかかる悲しみや苦しみを雨に例え、僕らは雨曝だが「それでも」というところから名づけられた。

「アンチニヒリズム」をコンセプトに掲げ、絶望の中から希望を見出す辛辣な詩世界を持ち、前編スクリーンをステージ前に張ったままタイポグラフィーと映像を映し出し行われる独自のライブを展開する。3DCGアニメーションを使ったMVは文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞するなど国内外で高く評価されている。また、リリースされるCDには楽曲と同タイトルの詩が付属されている。
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