365日のうち300日ぐらいはヨルシカ聴いています。

―― 町屋さんが、歌詞面で影響を受けたアーティストというと?

いっぱいいますよー。僕は聴かないものがないぐらい、いろんなジャンルを聴くので。でも僕にとって、メロディーに対する言葉のハメ方のイノベーションを起こしたのはミスチルさん(Mr.Children)ですね。「こんな例外が許されるのか!」という衝撃があって。あと、もっとぶっ飛んだハメ方をする、なんなら言葉に合わせてメロディーもいじっちゃう、RADWIMPSさん。

amazarashiさんは自分でチケットを買ってライブに行くぐらい好きですね。最近好きで聴いているのだと、YOASOBIさん。とくに「群青」がお気に入りで。あ、あと僕ね、365日のうち300日ぐらいはヨルシカさん聴いています(笑)。「盗作」とか「だから僕は音楽を辞めた」とか、もう本当に素晴らしいなと思います。実は僕、曲作りのなかで歌詞を書く時間がいちばん好きなので、アーティストの歌詞はかなりたくさん読んでいますね。

―― Wikipediaで“ヴィジュアル系出身”と拝見していたので、こんなに幅広いアーティストから影響を受けていらっしゃるとは知りませんでした…!

そう、Wikipediaに僕のことあんまり書かれてないんですよ(笑)。たしかに20代前半まではビジュアル系バンドをやっていました。ステージに立つのも早くて、15歳ぐらいでオリジナルの曲を人前で弾いていたんですね。やっぱりビジュアル系の世界って、退廃的なものに美学を見出すものが多くて、自分にはそういう素養も理解もあると思います。だけど、僕は基本的にハッピーエンドが好きなんですよ。聴いてくれたひとが、曲を聴き終えたときに、気持ちが晴れても良いし、同調して思いっきり泣いてくれても良い。ただ何かしら心が動いて、スッキリして「さぁ仕事しよう」「勉強しよう」って思ってもらえる音楽を提供していきたいんですよね。

―― それは町屋さんが歌詞を書く上で大切にされていることでもありますね。

ですね。「アーティストとして存在していたい音楽のジャンルは何ですか?」という問いがあったとしたら、僕はポップスだと答えます。ポップスって、もっとも多くのひとに聴かれるものだし、そのためにはポピュラリティーがなくてはいけないし、キャッチーでなくてはいけないし、より多くのひとの心を掴まなきゃいけない。かつ、ポップスって一括りだけれど、めちゃくちゃいろんなタイプがあるじゃないですか。だから難しいと思うんですよ。僕はそこで勝負をしていきたいなという気持ちが強いですね。

―― そういうポップスを作るにあたって、これは使わないようにしようという言葉などはありますか?

コンプライアンスに引っかかる言葉ぐらいかな(笑)。ネガティブワードも使いどころだと思っていて。たとえば、ハッピーエンドに持っていくために、一回落とすという使い方もできるじゃないですか。だから僕のなかでNGなワードはないかもしれませんね。

―― 逆に、好きでよく使う言葉はありますか?

これは聴いてくれているひとがいちばんわかるとは思うんですけど、僕は本当に“回想おじさん”なんですよ(笑)。だから「夕暮れ」とかがすごく多い。すぐに黄昏れちゃうんです。でも実は「ブルーデイジー」では、ちょっと言葉の使い分けにこだわりがあるんです。1番のサビに<思い出の空は黄昏れる オレンジ色の町並みを背に>ってあるじゃないですか。これはね、人口5万人以下で区切った<町>なんですよ。

―― なるほど…!

そして2番では<もしもこの街の片隅で 僕を呼ぶ君の声がしたら>とあるんですけど、これは都市部にいる想定なので<街>です。人口5万人以上。つまり同じ言葉でも<町>か<街>どっちを使うかで、人口密度がわかるわけですよね。そういうところは意識しながら書いていますね。

―― 町屋さんにとって歌詞ってどういう存在のものだと思いますか?

そうだなぁ…。日記みたいに曲を書くこともあるんですけど、和楽器バンドで提供する場合は、自分のための歌詞じゃないという意識が非常に強く働いているんですよ。最初に聴くひとの顔を想像して、どういう気持ちになってもらいたいか考える。そこに基づいて書くものなんです。でも、冒頭でもお話したように、自分の内側にないものは引っ張りだせない。だから、自分の心の日記の中からワードやイメージを摘まみ出して、それを歌詞にするという感じなんですよね。

―― ありがとうございました!最後に、これから挑戦してみたい歌詞というと、どんなものですか?

書いているけど、一向に使われない、ぎゃんかわなアイドルソングみたいなものとか(笑)。なんか…政治批判をしてもしょうがねーなとかも思うし。それよりも前向きなことを歌って、みんなに前向きにものごとを捉えてもらったほうが、生産的なんじゃないかなって気がして。だから僕は文句を言うだけの歌とか、ほぼ書いてないです。

あと昔ね、まったく差しさわりのない歌詞しか書かないひととバンドをやっていたことがあって。僕は曲を書くんですけど、当ててくる歌詞が絶対に心に刺さらないようなものなんですよ。そのひとは「歌は、良くも悪くも誰かの人生に影響を与えるものだから、俺は人生に影響を与えるものを書きたくない」って言っていたんです。それはそれで、ひとつの正義だなと思いました。でも、僕はより多くのひとに刺さって、より多くのひとの心を動かす音楽をやりたいという気持ちが強くて。だから僕はそのバンドを抜けたんですけどね(笑)。

まぁ「雨上がりのパレード」みたいな歌い方で、ぎゃんかわなポップソングやってみたいな…。ただ、うちのメンバー8人がいかつい見た目でずらーっと並んで、ぎゃんかわを演るのもちょっと違うなと思うので(笑)。どこかで提供できたら良いなとかも考えていますね。

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和楽器バンド『Starlight』E.P.
2021年6月9日発売
UNIVERSAL SIGMA

初回限定MARS RED盤
UMCK-7108 ¥2,420(税込)



CD Only盤
UMCK-1687 ¥1,650(税込)
収録内容
直筆色紙プレゼント

町屋の好きなフレーズ
毎回、インタビューをするアーティストの方に書いてもらっているサイン色紙。今回、和楽器バンド 町屋さんの好意で、歌ネットから1名の方に直筆のサイン色紙をプレゼント致します。
※プレゼントの応募受付は、終了致しました。たくさんのご応募ありがとうございました!
和楽器バンド

詩吟、和楽器とロックバンドを融合させた新感覚ロックエンタテインメントバンド。鈴華ゆう子(Vo.)、いぶくろ聖志(箏)、神永大輔(尺八)、蜷川べに(津軽三味線)、黒流(和太鼓)、町屋(Gt.&Vo.)、亜沙(Ba.)、山葵(Dr.)の8人で構成。2014年4月にアルバム『ボカロ三昧』でデビュー。2015年に発売したセカンドアルバム『八奏絵巻』はオリコン週間ランキング初登場1位を獲得し、第57回『輝く! 日本レコード大賞 企画賞』を受賞。また国内外において精力的にライブを行い、2016年にはデビュー1年9ヶ月にして初の日本武道館公演開催、海外においては北米単独ツアーを開催し、ワールドワイドに展開。2018年には5thアルバム『オトノエ』が第60回『輝く! 日本レコード大賞 アルバム賞』を受賞。

2019年にはさいたまスーパーアリーナ2days公演を成功させ、よりワールドワイドな活動を本格的に始動させ、世界最大のレコード会社ユニバーサルミュージックとグローバルパートナーシップ契約を締結。2020年2月には、大阪城ホールで行われたオーケストラとの共演ライブである「Premium Symphonic Night Vol.2」で、グラミー受賞アーティストEVANESCENCEのAmy Leeと共演し、ワールドクラスのパフォーマンスを披露。10月発売の最新アルバム『TOKYO SINGING』は困難や逆境に負けない力、諦めない強さ、そして、何度でも立ち上がる勇気をコンセプトに、一変したこの世界に向けて、ここTOKYOからイマ届ける和楽器バンドからのメッセージが詰まった作品となっており、各配信サイトで33冠を獲得するなどロングセールスを記録中。今、日本のみならず世界中から注目を集めるアーティストである。
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