僕は今でも自分が作詞家だという自覚がなくて、皆さんと同じように街の中で喜怒哀楽、呼吸をしながら、リアルな感情を切り取って歌詞に詰め込んでいる“作曲家”です。
23歳の頃、そんな自分の描く歌詞を面白いと言ってくれた森高千里さんのプロデューサー・瀬戸さんが、彼女のデビュー曲の歌詞を書くチャンスをくれました。
だからタイトルは、この業界に入るきっかけを掴んだ自分自身の幕開けと、彼女のデビューを掛け合わせて「NEW SEASON」にしました。
まず、ひたすらメロとTrackを何回も聴いて、テーマとなる言葉やフレーズを絞り出していきます。
その過程の中で、時空を超えて16歳に戻ったり、時には女の子の気持ちになって恋に悩んだり、世間からはみだしていた頃のヤンチャな自分を思い出したりする事もあります。
最近60歳を手前にして、本当に人生において大切なものは何だったのだろうと考えています。いずれそれが、一つの歌になって出て来るでしょうね。
メロディが求めているグルーブ感。例えば、断定メロなのか、語りかけメロなのか、畳み掛けメロなのか、沸き立つグルーブか、まったりな隙間感か、、、そこに、先程羅列したような“REALな気分”を混ぜ合わせていく。そんな臨場感を1番大切にしています。
18歳の頃からずっと変わっていないですが、まずはインスピレーションが湧くまで、カフェやラウンジで大枠のテーマを考えます。そして浮かんできたら、生み出されていく歌詞が街の空気感と混じるように雑踏や喧騒の中へと紛れていきます。そして最終的に歌いやすさ、ハマりなどを意識して語尾や言い回しの変換をします。
「White Love」は、本当は世の中に出すまでちゃんと受け入れられるか不安でした。それまでずっとパワフルに歌ってきたSPEEDが、メロディも地味で元気じゃないし、でもここで冒険しないと、20代から上の未知な層に広がらないと思いました。
歌詞に関しては、僕の中で「White Love」は、付き合いたての女の子の半分片想いの歌なんです。彼氏のほうはもしかしたら他に誰かいるかも。でも女の子は本気。
それまで永遠一人称で歌ってきたSPEEDが、そんな切ない気持ちを胸に秘めながら、この曲の最後に初めて2人称である<あなたのために生きていきたい>と歌っています。
このフレーズは、デビューから1年経って、これからずっと厳しいショービジネスの世界で生きていくぞという、SPEEDの決意表明とも掛け合わせて作りました。
普段見落とされているようなディテールや、繊細な気持ちの動きが表されている言葉。街鳴りなどで特に意識していないのに、言葉がピーンと立って聞こえてくる歌。凄くひとりよがりな言葉でも、妙に刺さってしまう歌詞。
松任谷由実さんの「セシルの週末」。
あの2コーラスあるかないかの凄く短い歌詞の中に、まるで一本の映画を見たようなストーリーが、ギッシリと詰め込まれているところ。
不良だった14歳、とっくに愛が冷めて別の部屋で暮らしている両親、“またあの娘、男を引っかけている”と噂している遊び友達、その頃の事を打ち明けると本気で怒ってくれた不思議な人、そんな自分にプロポーズしてくれて変わり始めていく自分、そして素直になった私にきっと驚いてくれると期待する両親への想い。という、一人の少女から大人の女性に至って結婚していくというストーリーのウエディングソングになっています。この主人公の女の子は、実は本物の愛に飢えていたのだと思います。
“夜は明ける 雨は上がる 明日は来る、、、”
一歩引いて歌詞だけ見ると“そりゃそうだろ”と最近思う。
これまでついつい沢山使ってしまいました。すみません。
出と引きの大切さ。曲を作る上でも僕は大事にしている事ですが、際立たせたいポイントをより立たせる為に、あえて抜くところをつくれるか。短いフレーズに、どれだけダブルミーニングなどを効かせて太い意味を込められるか。
あまりディレクターやクライアントへ寄り過ぎた歌詞を書かない事。 自分の世界観を見失いがちになる上に、どちらも満足するようなバランスで書けた歌詞は、バランスがいいが故に、はみ出さないから出た後のサプライズも少ない。大事なのはアウトプットした時のパワーだから。