おとぎ話主催イベントであるこの日。スタートは、うつみようこ&YOKOYOKO BAND。メンバーそれぞれがキャリアも長いということもあるが、個性的で強靭な音を持つにもかかわらず、全ての音が合わさった瞬間にとてつもなく心地よいロックサウンドとなり体全体に染み渡ってくる。イベントとは言え、スタートからこんなにも迫力のあるバンドが登場すると、次のバンドの印象が薄くなるのでは...と、正直主催であるおとぎ話のメンバーを心配してしまった。だが、その心配をよそに、1曲目「YOU」から、彼らは自分たちの“今”を素のままにさらけ出した音で観客を惹き付けた。一見ただがむしゃらに演奏しているように見えるものの、ドラムの前越啓輔の軽快でかつ的確なリズムはバンドの芯をきっちりと支えている。他のメンバーが暴れ回る中、黙々とリズムを刻む、ベースの風間洋隆。切れ味のある牛尾健太のギター。そして、今にも泣きそうな顔をして観客に歌いかけるヴォーカルの有馬和樹。思春期の男女が恋に恋して、夢を夢見て、愛を愛して、青春という言葉に青春して生きているような、誰もが感じたことのあるアンバランスな感情を素直に音に表現した彼らの楽曲。自分たちの目の前にあるリアルなものだけを音にして伝えている。すんなりと心に入るのはきっとそのせいだろう。嘘の通じない、真っ直ぐな彼らのライヴ。終わった瞬間何か温かい気持ちになっていた。