轟音渦巻くステージで担ぎ上げたギターを渾身の力で打ち付け、破壊。手元に残ったネックを客席に投げつけ、うずくまり、絶叫。それは決してパフォーマンスではなく後藤まりこ(ギターと歌)のあふれ出した激情がアウトプットされた瞬間。“あんたは誰や。ロックはなんや。音楽は誰のもんや”と叫んだ、ジャパニーズ・パンクバンド・ミドリのワンマンライヴはさまざまな感情があふれ出たものだった。観客に向けて“愛してる”“来てくれてありがとう”と呟いたかと思うと、直後“死ね!”“アホンダラ!”と放つ。思ったこと、感じたことをそのままに表す姿が、ライヴはこういうものだ、ライヴハウスはそれができる場所だと思い出させてくれる。だから、オーディエンスも感情剥き出しとなり、グラグラと沸き立つ。そして、ミドリのライヴは通常のライヴとは概念が根本的に違う。例えば普通はアッパーチューンを冒頭において、中盤にはミディアム、バラードで緩急を付け、MCでは楽曲の説明をする...などなど。ミドリのライヴは1曲1曲に全ての想いを吐き出して、めまぐるしく変わる感情を後押しするかのようにサウンドにさまざまなアレンジが施されている。1曲で並のバンドの一本分くらいのライヴの質があるのだ。また、「ゆきこさん」は“デストロイ”とシャウトしノイジーだが、「POP」はハジメ(鍵盤とコーラスとノイズ)の鍵盤がすごく美しくて後藤は穏やかに歌う。楽曲のバリエーションからして単なるパンクバンドとは一線を画すものがある。そんなステージにトータル15曲、1時間半弱の時間はすぐさま過ぎていき、圧倒された後の心地良さがこの日も体に染みていた。