日本のロックシーンに於いて椿屋四重奏の立ち位置というのは、一種独特だと思う。洋楽から受けた影響がそのまま音に出ているバンドが多い中、彼らは少し傾倒が違う。この日も中田裕二(Vo&Gu)がMCで沢田“ジュリー”研二の生誕60年記念の東京ドームライヴに行ってきたことを何度も興奮気味に語っていたが、洋楽のエッセンスを十分に吸収した上に、歌謡曲を自分たちなりに解釈し、昇華させているのだ。さらに、そのサウンドはカラフルなようでいて、どんなに色合いが明るくとも陰りを持ち、ポップとメランコリックが同居する中間色の色彩を放っている。そういうところに昭和歌謡の影響があるのかもしれないが、決して懐古趣味に陥らず、新鮮な刺激を与えてくれるのが椿屋サウンド。今回のツアーはアルバムを引っ提げたものではないだけに、懐かしい楽曲が多くプレイされ、その要素を強く感じたし、次の椿屋を示すものとしてプレイされた5曲の新曲からも、そんな特性が垣間見れた。また、ドームでのライヴに触発されたのか、ジュリーの名曲「勝手にしやがれ」も振り付きでカバー! 客席の大多数はリアルタイムではないにもかかわらず、振りに合わせて一緒に盛り上がっていたが、一番楽しんでいるのは中田本人のようだった。 ...といった具合にディープな椿屋に触れた今夜のライヴ。歌謡曲的な艶っぽさ、シティポップ的な華やかさ、ロック特有の甘味な毒気、プログレバンドばりの緻密でドラマチックなバンドアンサンブル...まさに、新世代の和製グラムロックを堪能した気分だった。