イルミネーションが彩る赤坂の街並を抜けて会場に入ると、そこでもBGMにクリスマスソングが流れていた。やがて客席に設置された席が徐々に埋まっていき、雨と寒波だった外の世界のことを忘れた頃、客電が落とされる。幾本ものスポットライトの中でアコギを爪弾きながら「シロイケムリ」を歌い始める広沢タダシ。しっとりとしたメロディーをやさしく歌いながらも、その歌声が持つ説得力でセンチメンタルなフレーズのひとつひとつが胸に響き、切ない気分にさせられた。これが“共鳴”なのだろう。その後も、アコースティックスタイルで届けられる歌に、ゆったり&どっぷりと浸っている自分がいた。そして、計8曲を演奏したところで約10分の休憩が入り、今度はバンドスタイルで2部がスタート。アコギをかき鳴らす広沢の伸びやかな歌声をベース、ドラム、ピアノ、バイオリンがサポートするという編成で、ファンキーな「愛を探す旅」、バイオリンの音色が悲しさを倍増させた「さよならなんて」、客席に笑顔が咲いたアッパーチューン「くちづけ」などを届け、1部とは違った温もりのあるサウンドを場内にふり撒いていく。アンコールでは“今年の僕の中のテーマソング”と言って「夢色バス」を弾き語ると、再びバンドメンバーと「サフランの花火」をプレイ。じっと聴き入っていた客席も、最後は“夢を叶えるため流したその涙 みんな思い出に変わればいい”というフレーズで大合唱となり、アットホームなムードが会場いっぱいに広がる中、終演を迎えたのだった。アコースティックとバンドという2部構成で、ハートウォームな時間を過ごしたライヴ。会場を出た後もまだ、雨上がりの冷たい空気が心地ち良かった。