藤田麻衣子が8月4日に東京・ヒューリックホール東京でワンマンライヴ『藤田麻衣子 Live 2023「Color」』を開催した。本公演はタイトルにもあるように、5月24日にリリースした最新アルバム『Color』を引っ提げてのもの。オープニングはそんな『Color』収録の「タンポポ」が飾った。ギターの心地良いイントロが響くと観客が手拍子で盛り上げ、“みなさん、こんばんは! 今日は楽しんでってください”と呼びかる藤田。歌が始まると明るい雰囲気が会場に広がっていき、ピアノの澄んだ音色に乗せた切なさを感じる歌声が響く「その声が聞きたくて」では、1曲目とは全く違う空気を体感させてくれた。
2曲を歌ったところで、会場を見渡し、“明るく光が当たると皆さんのお顔が見えるので、とってもとっても嬉しいです。今日はいっぱいみなさんの顔を見て歌いたいと思います”と笑顔を見せ、“毎日35度を超えている感じですごく暑いんですけど、今日は涼しい気持ちになったり、暑くなったり、みなさんが癒されるような時間になるように、楽しいライヴにしていきたいと思います”と話す。そして、『Color』の内容に触れて、シンガーソングライターだが自作曲にこだわらず、いろんな人に参加してもらって作ったと話し、“今日はみなさんにいろんな色を感じてもらえたらと思っています”と、この日の公演もアルバム同様にバラエティーに富んだカラフルなものにしていきたいという想いも伝えた。
ここでメンバー紹介。このライヴに参加しているのは山本清香(Pf)、北島優一(Gu)、小川清邦(Ba)、藤沼啓二(Dr)の4人。その流れから「花火」「水風船」「金魚すくい」といった“夏曲”ブロックに突入する。ノスタルジックだったり、切なさだったり、この季節ならではの味わい深い時間を楽しむことができたことは言うまでもない。
「できるなら」は“まなみのりさ”への提供曲で、20代後半の等身大の気持ちが描かれた楽曲になっている。ここに表されている“もどかしさ”も共感できるポイントと言える。そして、「きみのあした」は全員が参加できる応援ソング。観客が手拍子で藤田の歌を後押しし、後半は“みんなで一緒に歌ってもらいたいと思います”との声で会場中で大合唱に。最初は少し遠慮がちだった人もだんだんと声が大きくなっていき、最後にはしっかりとした一体感が生まれたのを感じた。この曲は藤田の地元・名古屋でミュージカルになることが決定しており、上演は2024年2月(6公演)の予定。どんな作品になるのか楽しみだ。続いての「ありがとう」はインタビューの時にこの曲が生まれた経緯を詳しく語ってくれたように、テレビ番組をきっかけに視覚障害を持ちながら音楽活動を行なっている柳田はるかと出会い、交流を持つようになり、この曲が生まれた。柳田の自己紹介的な歌詞が藤田の作るメロディーに乗り、新鮮さを感じる楽曲に仕上がった。THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLSへの提供曲「always」と合わせて2曲、ピアノでの弾き語りで聞かせ、前半を締め括った。
休憩を挟んで後半がスタート。最初の2曲「鏡よ鏡」と「美女と野獣」はwacciの橋口洋平が作詞作曲(「美女と野獣」の作詞は藤田との共作)を手がけた作品。それに続く「シンプル」「戻りたい、もう戻れない」もSUNNY BOYやMONJOEが作曲にかかわっており、橋口楽曲も含め、最新アルバム『Color』の特徴をしっかりと伝えてくれる。楽曲制作に“誰か”が関わることによって、新しい色を加えることに成功した。
「ベイブリッジ」「1.2.3」「campfire」のブロックは藤田いわく“今日唯一の盛り上がり、でも飛んではいけない時間”。アップテンポな楽曲でタオルを回したり、盛り上がり必至の曲だったりするが、前半の最初のMCで説明していたが、下の階にプラネタリウムがあるということで、ジャンプは禁止。なので、盛り上がる時間だけど飛んではいけない時間でもある。このブロックでは全員が立ち上がり、ジャンプはできないがそれぞれが手拍子だったりタオル回しなどをしながら楽しんでいた。また、「campfire」をライヴで披露するのは10年振りだそうで、“40歳になっても歌っていいですかね?”と藤田が観客に問いかけると大きな拍手が返ってきた。予想外の反響に“えぇ!? 自分で聴き直して、恥ずかしいなって(笑)”と照れながらも“まぁ、でもアツくなれて楽しかったですね”とポジティブに受け止めた様子。
いよいよ終盤。「手錠」「漆黒」の2曲で本編を締める。この2曲は“いけない恋”という共通点があり、平川大輔とのコラボ曲「手錠」を一人で歌唱し、『Color』というアルバムが生まれる発端となった「漆黒」を感情を込めて歌い上げた。アンコールの拍手に応えてステージに再登場した藤田はヒューリックホール東京でライヴをするのは初めてだが、ホールの客席が好きで、リハーサルの合間もいろんな席に座ってみたと話し、“赤い椅子、こういう感じがたまらなくて、ホール好きな私の中でも上位に食い込んだ”と明かした。そして、“普通ってすごく幸せだなって。普通でいることって逆に難しいことなんじゃないかって思うんです。こういうのが幸せなんだよな、ありがたいことなんだよなって思ったりします”と、当たり前と思っていた風景を思い返しながら作ったという「足音」を歌唱した。
“今年の中でもライヴが決まったらお知らせしたいなと思ってます。今日は来てくださってありがとうございました。とってもとってもお顔が見れて嬉しかったです。みなさんの明日が素敵な日になりますように”と感謝の気持ちを改めて伝え、ラストに「素敵なことがあなたを待っている」を歌唱。後半、一部をアカペラで聴かせる部分があったが、その声に気持ちがスーッと引き寄せられる感覚を味わった。タイトルどおり、いろんな色が感じられるライヴとなった本公演。この次はどんなテーマのライヴを見せてくれるのか楽しみだ。
撮影:宮家和也/取材:田中隆信