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LIVE REPORT

蒼井翔太 ライヴレポート

【蒼井翔太 ライヴレポート】 『蒼井翔太 LIVE 2023 WONDER lab. Garden supported by JOYSOUND』 2023年2月18日 at 両国国技館

2023年02月18日
@両国国技館

2階建てのステージ中央には巨大なツリー。そちらを見やり“ステージ、花が一輪も咲いていないんです。みなさんの持っているペンライトでいろんな色の花を咲かせてもらえればと思います”と客席に告げた蒼井翔太は、この日のライヴ中、何度も“僕に光をください!”と呼びかけた。ファンへの感謝を歌の花束に例え、当初は“Bouque”というタイトルを考えていたが、それでは足りないと最終的に“Garden”と名づけられたツアーの最終日。オーディエンスから贈られる満場の拍手と光の花は、“みなさんがいなくては成立しない!”という彼の言葉を、そのまま五感で証明してくれた。

荘厳なオーケストレーションに導かれ、壇上に現れた蒼井翔太が静かに歌いだしたのは1stシングルから「Virginal」。花があしらわれた白のスーツ姿で“ツアーファイナル、みんなで盛り上がっていきましょう!”と呼びかけ、伸びやかな歌声と躍動的な動きが映えるダンスナンバーが、客席の青い光を揺らしていく。以降、低音ヴォイスに反応してピンクに染まる場内にマニッシュな色気を振りまく「Stay With Me!!」、“声が出せないぶん、みんな大きく手をあげて僕に光をください!”という言葉に、一面の赤が振り上がるデジタルロック「INVERTED」と、文字通り色とりどりの花が咲き誇っていくさまは圧巻。そんな超序盤から“ありがとうの想いを込めた曲です”とど直球のラブソング「ずっと...」を歌い上げ、湧き起こる温かなクラップに“ありがとう”と囁くのだから、“感謝”というテーマは伊達じゃない。

そんな愛あふれる空間を支えていたのが、蒼井の類まれなるヴォーカル力と豊かな表現力。ロックチューン「秘密のクチヅケ」では、歪みの利いた声音でやさしく、時に荒々しく、歌詞の通りサディスティックでエクスタシーに満ちた世界を繰り広げ、その勢いはダンサーと合流しての「UNLIMITED」でさらに加速する。どんどん脂の乗る歌声は心地良く伸び上がり、ダンサーパートで次々にソロダンスをキメた面々が手をかざした先には、ヴェールを靡かせたドレッシーな装いの蒼井が! まさしく森の精霊のような出で立ちはアグレッションに切ない和の情緒を滲ませた「哀唄」にぴったりで、一転、ロックに疾走する「HEAVEN!」で“ヤレるもんなら ヤッてごらん”と吐き捨てるさまは、まるで森の魔女のようにミステリアスだ。

両国国技館に立つのは2017年以来ということで“当時とはちょっと違うように感じたんですよね。身長が物理的に2、3センチ大きくなったからなのか?(笑)”と驚きのエピソードで笑わせつつ、ソールドアウトの結果に“嬉しいんだ!”と顔を綻ばせた蒼井。“声優アーティスト界という大きな樹に個性的な花を咲かせたい。もっと注目を集めるきっかけになりたい”と彼ならではの決意を告げ、“強い赤とやさしい青を混ぜ込んだ紫...男らしい強い声とやさしく切なさのある声と、僕の声質を表すような紫をもっと濃く、みなさんにお届けできるように自分自身も強くなっていきたい”と始まった「MURASAKI」は、その言葉どおり蒼井翔太ワールド全開だった。たおやかな動きで背後のダンサーを操る妖艶な和ダンスチューンで魅了し、“参りましょう!”からのこぶしを利かせたフェイクで「零」へとなだれ込む展開もアツく、“皆様の光を浴びせて!”で振り上がるペンライトの反射が舞台の巨大樹に桜の花を咲かせていく。繊細さと力強さを併せ持つ蒼井翔太のパフォーマンスは、まさに青と赤を混ぜ込んだ紫に違いない。

そして、『ポプテピピック TVアニメーション作品第二シリーズ』のオープニングテーマでもある「PSYCHO:LOGY」のイントロが鳴ると、黒一色に着替えた蒼井がステージ中央で朗々とオペラ歌唱! そんな彼を崇めるように白服のダンサーたちが取り囲むという構図は儀式めいて、さらにデジタリックなビートに乗せて全員一列になって揺れるというエキセントリックな光景に連なったのは、なんと『ポプテピピック』のキャラクターであるポプ子とピピ美だ。蒼井曰く“デジタルでサイケデリックでオペラ調でトリッキーな”楽曲と、シュールな作品世界の融合をステージ上でも見事に果たし、去り際にはポプ子がダンサーに蹴りを入れる“らしい”一幕も。ツアーファイナルだけのサプライズで客席を大いに沸騰させながら、“でも、刺激が足りないという方に、こちらの“END”をお送りします”とエッジィ極まるロック曲「BAD END」でアレンジ多彩なヴォーカルを聴かせ、真っ赤な客席に拳を突き上げるのもニクい。4つ打ちビートでダンサーとシンクロする「Existence」のパフォーマンスも観応え十二分で、痛感したのはエンターテイナーとしての底力。ツアーファイナルということで“最後の最後、みなさんに精いっぱい、ありがとうの気持ちを歌に込めたくて、今日歌い終わったらフワーッと天界に戻ってしまうんじゃないかって、そんなパワーを放出している気がします”という言葉も納得だ。

作品、キャラクター、歌番組への出演と、2022年の出会いを振り返り、“いつもみなさんが僕の大きな翼になってくれるおかげで、どんな高い壁でも強い風でも高く飛んで乗り越えられる気がします。みなさんも壁が現れた時、僕の歌のどれかが翼になって乗り越える力になったらいいなと思います”と歌い上げたのは「Key to My Heart」。自身も出演するTVドラマ『REAL⇔FAKE Final Stage』のエンディングテーマで“君”という存在の大切さを綴るナンバーは、生バイオリンの音色も交えながら一歩一歩踏みしめて前へと進むような力強さを湛え、客席で揺れる青と白のペンライトがステージに向けてエールを贈るという情景が美しい。

ツアーのコンセプトをその名で表した「flower」でキャッチーに本編を終えると、アンコールの「Harmony」では“終わりなんてない僕たちの物語”と高らかに歌い上げ、「give me ♡ me」では6人のダンサーとともに7人グループのセンターのように躍動的なパフォーマンスで観る者の目を奪う。さらに“可能性はひとつじゃない!”と、希望にあふれた「Baby Steady Go!!」で“まだまだ、いろんな高いところへ飛び立ちたいと思います。一緒に行ってください!”と決意表明すると、約6年振りのアルバム制作と7月のファンクラブイベント開催が決定したことをダブルアンコールで発表。そして、“いつもみなさんからたくさんの愛をもらっているので、今日、改めてみなさんに愛をお返しします。蒼井翔太になって初めて書いた曲です”と歌われたのが、10年前のデビューミニアルバムに収録されていた「君のとなりで」。この日、MCで伝え続けてきた感謝がそのまま綴られた実直なバラードに客席は一面の青へと染まり、感極まった表情を浮かべた蒼井は“これが終着点ではございません! これからも一緒に、もっといろんな景色を観に行きましょう!”と宣言。その景色の中には、間違いなくファンという名の花が咲き誇っているに違いない。

撮影:上飯坂一、増田慶/取材:清水素子

蒼井翔太

アオイショウタ:2011年声優デビュー。主な出演作として『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズの美風 藍役、劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』(フィッシュ・アイ 役)TVアニメ『2.43 清陰高校男子バレー部』(棺野秋人 役)TVアニメ『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...』(ジオルド・スティアート 役)など。13年6月にミニアルバム『ブルーバード』でアーティストデビュー。19年1月~2月に掛けて自身最大規模となるライブツアー『蒼井翔太 LIVE 2019 WONDER lab. I』を全5都市にて7公演行った。声優のみならず、アーティスト、俳優としても活躍中!