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LIVE REPORT

堀江由衣 ライヴレポート

【堀江由衣 ライヴレポート】 『LIVE TOUR 2022 文学少女倶楽部II 〜放課後リピート〜』 2022年5月7日 at 立川ステージガーデン

2022年05月07日
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堀江由衣がツアー『堀江由衣 LIVE TOUR 2022 文学少女倶楽部II ~放課後リピート~』の東京公演を5月7日と8日に立川ステージガーデンにて開催した。生バンドとダンサーを従えた豪華なステージは幕間のムービー内のオリジナルストーリーとリンクしながら展開し、ムービーのストーリーとリンクした演出も多数あり、最後には全てが種明かしされるという、謎が解けた時の爽快感とライヴを満喫した充足感の両方を味わうことができるアクトだった。それはまるでリアル謎解きイベントと融合したような、何度も繰り返し観たくなる堀江ならではのスタイルのライヴ。その一日目である7日の公演をレポートしたい。

会場に足を踏み入れると、ステージでは青い熊の“熊田先生”が“声が出るペンライト”の使い方や曲ごとの色分けなどをレクチャーしていた。そして、ライヴの始まりは、まずはムービーから。2019年に開催されたツアーでのストーリーが足早に紹介され、その続編であることや前回同様“転校生・堀江由衣”が主人公であること、さらに学園祭で“文学少女倶楽部”のライヴを成功させるため、さまざまな困難を乗り越えるというストーリーが提示される。

堀江は制服衣装で登場すると、ダンサー、バンドメンバーとともに「月とカエル」を披露。青春を感じさせるさわやかなメロディーを持った疾走感あふれる同曲を歌いながら、クラシカルなロングスカートを翻し、息の合った見事なダンスを繰り広げる。激しい動きにもかかわらず、息ひとつ乱さない凜としたヴォーカルから、入念なリハの跡とキャリアの凄みを感じることができたことも追記したい。

このツアーでは3月にリリースされたアルバム『文学少女の歌集II-月とカエルと文学少女-』の楽曲を中心に、幅広くさまざまな時代の楽曲が選曲された。4つ打ちのダンスポップ「Wake Up」で観客に振り付けをレクチャーして一緒に踊り、「半永久的に愛してよ♡」は《本当に 本当に わたしを 愛してる?》という歌詞が印象的で、ピアノと甘い歌声だけでスタートし、会場は照明と観客のペンライトでピンク一色に染まった。

また、堀江由衣のライヴは、ことあるごとにその愛が試されるのも醍醐味。ペンライトを持っていない観客には“手ぶらの人は、その色になった気分で立ってください”と示唆し、平坦な1階席では後ろの人が観やすいように“頭を動かさずにジャンプして”と、たまにハードな要求も。さらに“前の人は曲ごとにペンライトの色を覚えて、後ろの人に伝える役割があります!”と体力だけでなく記憶力も強要し、“それではみなさんのお手並み拝見といきましょう!”と煽る。しかし、観客は嫌な顔ひとつせず、むしろ笑顔で楽しみながらそれに全身全霊で応えるのだ。それもこれも全員でライヴを作っていくためのもので、長年にわたって培われてきた堀江とファンだからこその関係性が見て取れた。

“過去最高の難易度。頑張ってください!”との発破で、会場が一丸となった「キラリ☆宝物」。ピコピコとした軽快なサウンドに乗せる堀江の可愛らしい歌声も実に楽しそうだ。また、幕間のムービーに登場した看板をバックに歌った「The♡ World's ♡End」は、ペンキで汚れているような制服の衣装で、人形のような動きのダンスとともに魅せ、徐々に速くなるテンポに合わせて最後はアツく叫ぶように歌い上げる。

また、青春ギターロックといった雰囲気の「チャイム」で疾走感あふれるビートに合わせてエモーショナルな歌声を聴かせ、「虹が架かるまでの話」では会場に伝えるように手を広げながら歌う堀江。バックの映像には虹がかかり、青春の思い出が蘇って胸を締めつけられるような気持ちになった。そして、「ALL MY LOVE」でネイビーの差し色が効いたチェックドレス衣装で登場し、メランコリックな楽曲に乗せて切なげな歌声を聴かせ、続く「Adieu」では祈りを込めるように歌う。そのフォーメーション移動しながらの振り付けも見事で、可愛さ、清廉さ、そこにダンスのカッコ良さも加わり、同曲の新たな魅力を発見させてくれるようなものになった。一方、ステージの隅で熊田先生がロープを必死で掴んでいたことも触れておきたい。

MCでもさまざまなコーナーで観客を楽しませる。アンケートコーナーでは、どこから来たのか、何をやっている人なのかなどの質問が客席に投げかけられ、ペンライトの“ハイ”ボタンが大活躍。また、“堀ジャム”と命名されたバンドメンバーが音楽面を解説するコーナーも。「Adieu」のドラムの実演や、同曲のキーボードの“ドゥリ〜ン(グリッサンド)”が命がけであるなどのエピソードに堀江も喜々として話しに聞き入っていたのが印象深い。

ライヴに戻るとアイドル調の「心晴れて 夜も明けて」で天井からキラキラが舞い散る演出が光り、「YAHHO!!」ではタオルとペンライトを手に会場がひとつになる。そして、再び最初の衣装に戻って「CHILDISH♡LOVE♡WORLD」を熱唱。台詞パートには手拍子が広がり、《フレー!フレー! ほっちゃん》のかけ声部分では、観客がペンライトを振ってジャンプ! バックには無数の♡が映し出され、会場はラブで埋め尽くされたのだった。

“みなさん、今日は文学少女倶楽部のライヴに来てくれてありがとうございます!”

最後のムービーで衣装がペンキだらけだった理由、なぜ熊田先生がロープを握っていたのかなど、全てが解き明かされる。実は、声が出るペンライトや開演前の熊田先生のレクチャーも伏線だった。堀江によれば文学少女倶楽部のライヴは全8曲で、堀江のタイムリープによって4つにルートが分岐し、ムービー中に出てくるミス・モノクロームの声が伏線になっていたとのこと。“なんというこのエモいオチ!”と、堀江は満面の笑みで全てを明かしたのだった。

その後、日替わり曲として、この日は「翼」を歌い、自らペンライトを持ち、間奏では指揮者になって観客を先導。田村ゆかりとのユニット・やまとなでしこの「Merry Merrily」は“久しぶりに歌う”とのことで、ポンポンを持ってダンスも披露。そして、ラストには“最後はやっぱりこの曲!”と紹介して、「Happy happy*rice shoer」を歌唱。会場には最上級の愛を示すオレンジのペンライトが灯り、堀江はそれに応えるかのようにステージを動き回りながら客席に手を振る。最後は“全員で飛びますよ!”とのかけ声で一斉にジャンプし、手に持ったブーケを客席に向けポーンと投げたかと思えば、ゴムでビヨ〜ンと戻って自らキャッチするという場面も。

約3時間半に及んだにもかかわらず、さまざまな仕掛けによってまったく飽きることなく魅せて、聴かせた本公演。コロナ禍であることを上手に活かしながら、観客を楽しませることを全力で実現したライヴは、堀江のライヴに対する想いと、ファンへの愛情が満ちあふれていた。

撮影:草刈雅之/取材:榑林史章

堀江由衣

ホリエユイ:“ほっちゃん”という愛称で親しまれ、キュートなルックスに加え、その透明感のある声が魅力的な超人気声優のひとり。代表作に『ラブひな』の成瀬川なる役や『とらドラ!』櫛枝実乃梨役、『化物語』羽川翼役など。ソロアーティストとして多数の作品をリリースしており、2012年9月に発売したアルバム『BEST ALBUM』はオリコンデイリーチャートで最高3位を獲得。また、ライヴは日本武道館、幕張メッセ、国立代々木競技場第一体育館などをはじめ、2018年には『KING SUPER LIVE 2018』で東京ドーム公演や上海公演に出演。