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LIVE REPORT

Mary's Blood ライヴレポート

【Mary's Blood ライヴレポート】 『The Final Day 〜Countdown to Evolution〜』 2022年4月9日 at 豊洲PIT

2022年04月09日
@豊洲PIT

昨年末、無期限活動休止を発表したMary's Blood。ガールズメタルのトップを走り続けた彼女たちが、活動休止前ラストワンマンライヴ「The Final Day 〜Countdown to Evolution〜」を開催した。二部構成で全22曲というボリュームで届けられた本公演。レーベルの垣根を越えた初ベストアルバム『Queen’s Legacy』がリリースされたばかりだが、セットリストは同アルバム収録曲と3分の2ほど同じ。彼女たちのこれまでの軌跡を総括するような濃いライヴとなった。

SE「Last Daybreak」からのオープニングは「Without A Crown」「World's End」を続けて。EYE(Vo)はマイクスタンドを両手で高く掲げたり、逆手に構えたりと堂々たる存在感を放つ。超アグレッシブな攻めの2曲に会場の熱気は爆上がりだ。

“ついにこの日が来てしまいました。このメンバーになって10年、最後に最高な景色を作りたいと思ってます。腕がもげるくらい、腰が砕けるくらい暴れていってください”(EYE)

との挨拶をはさみ、3〜5曲目はメロディアスかつドラマチックなナンバーを。叙情的なリフと80'sテイスト漂うギターソロが耳に残る「Wings」、サビはキャッチーながら心地良いドライブ感に彩られた「Let Me Out」「Moebius Loop」と駆け抜けていく。スタジオ盤の「Let Me Out」はアウトロがフェイドアウトで終わるが、ライヴでは多彩なテクニック満載の長いギターソロをきっちり堪能させてくれた。また、「Moebius Loop」ではRIO(Ba)が開放弦で演奏するタイミングで片手をあげ観客を煽ったり、SAKI(Gu)とYASHIRO(サポートGu)がお立ち台上でソロを弾くなど、いくつもの見せ場を作る。

RIOはMCタイムで“良い話は他のメンバーがしてくれると思うから。...数あるバンドの中から見つけてくれてありがとう”と言葉少なに(メンバー曰く“人見知りでシャイ”な彼女らしい)感謝を述べ、ヘヴィな「Hunger」の流れでベースソロを展開した。そして、メタルコア系のスピードチューン「R.I.P.」、頸椎の強さが試される「Counter Strike」とヘドバン曲の連続攻撃。これだけの速さのBPMでもギタリストふたりが息がぴったり合ったプレイを聴かせるあたりは流石だ。

全身黒い衣装でパフォーマンスした第一部から一転、第二部ではメンバーが全身白い衣装で登場。「Starlight」のMVを彷彿させるイメチェンだ。4つ打ちダンスチューン meets メタルとも言うべき「It's Alright」、アメリカンHR系の爽快感が突き抜ける「HANABI」、“心の中で一緒に歌ってください”と曲紹介された「Campanula」と、第二部は明るくポップな楽曲たちで幕を開けた。そして、SAKIのMCタイムでは“今まであまり言う機会もなかったので、メンバーにひと言ずつメッセージを”と、楽しかったエピソードを交えて3人のキャラ紹介&感謝の言葉も。

空気感が一変したのはドラムソロから。SAKIに“鋼鉄のドラマー”と紹介されただけあって、MARI(Dr)はツーバス踏みまくりのドラマティックな演奏を繰り出し、最後は銅鑼で締め括るという様式美に則ったドラムソロを披露した。その勢いのまま「Marionette」「Bite the Bullet」「Coronation Day」、初期の楽曲「Burning Blaze」(2012年発表のアルバム『SCARLET』収録)とスラッシュ系のスピードメタルを。MARIのMCタイムでは“お客さんも10人くらいだった”と結成当初の思い出や、アルバムをリリースしてのインストアライヴ、海外遠征などを振り返り、“今日がもっとも素晴らしい景色”と改めて感謝を述べた。

“行きます!”と気合いの入ったEYEの声を合図に「Promised Land」ではさらなる加速モードに突入。MAX全力で転がるようなリズム、音と音がある時はぶつかり合いある時は絡む、バンドらしいアンサンブル、自在なテンポチェンジ、サビで一気に視界が開けるような開放感、それらに照明もシンクロして、これぞメタルのカタルシス!と思わず笑顔になってしまうライヴならではの快感を味わわせてくれた。メンバーたちはMCで何度も“最高の景色”と言っていたが、この日、オーディエンス側ももちろん最高の景色を目に焼きつけたことであろう。

アンコールでは全員がツアーTシャツに着替えて登場。「Blow Up Your Fire」「Queen of the Night」と疾走感あふれるヘドバン曲をかましたあとは、EYEのMCタイム。“今日はメンバーからの言葉をみんなに届けたくて各自MCタイムで喋ってもらったけど、私も同じ気持ち。こんな幸せなバンドいないと思います。カラオケで歌うだけだったら簡単にできる。でも、このメンバーでこんなにみんなに聴いてもらって歌えるなんて、本当に幸せな人生です。活動休止は正直悔しいけど、こんな幸せな時間があったんだってことを忘れないでほしい。これからもMary's Bloodのこと大事にしてください”と、率直な気持ちをファンに伝えた。そして、“活動休止が決まってから書いたわけじゃないけど...”と前置きして「Starlight」と「Say Love」を。特に「Say Love」は3作前のアルバム『Revenant』(2018年発表)収録曲であり、発表時には単にライヴ来場したファンへの曲だと思っていたけれど、ラストライヴのオーラスで聴くと意味合いがまったく違って聴こえて驚いた。この場面にここまで完璧に刺さる歌詞だったとは...。まさにライヴとは生モノ。間奏後のサビは本来ファンとのシンガロングになるパートだが、今は発声できない状況下。シンセのバッキングだけが流れる部分では、EYEは胸に手を当て観客の心の声を感じているように見えた。

全ての演奏が終わるとEYEは“Mary's Bloodが遺した曲は永遠です!”と長嶋茂雄ばりに宣言。やりきった感があったのだろう、それまでの寂しげなムードから一転、晴れやかな笑顔で“みんなで写真撮ろう”と観客をバックに記念撮影。“私たちもみんなのこと一生忘れないから!”と気持ちの良い挨拶とともにステージを去った。

約10年ぶんの作品からライヴ映えする楽曲を選りすぐって並べられる機会なんていうのは、それこそ活動休止などの節目ではない限り滅多にないことだと思うが、この日はそんな10年に一度の貴重な夜。Mary's Bloodはメタルを軸としながらも、さまざまなアプローチに挑戦し続けた懐の深いバンドだったと改めて感じた。曲の良さも演奏力も持ち合わせているバンドだけに惜しい気持ちもあるが、メンバーがMCで言っていたようにそれぞれの音楽は続いていく。無期限という言葉は“ずっと”という意味ではなく、“期限を決めていない”という意味だ。どんな未来がこの先にあるのか、見守っていきたいと思う。

撮影:nonseptic/取材:舟見佳子

Mary's Blood

メアリーズ・ブラッド:2012年より現メンバーで活動を開始。13年春にアメリカ・テキサスで開催された大規模コンベンション『ANIMEMATSURI』にヘッドライナーとして招聘され3,000人の観衆を集めた。14年8月にアルバム『Countdown to Evolution』でメジャーデビュー。キャッチーでポップなメロディーと、激しくヘヴィな演奏を持ち味とする本格派ガールズメタルバンド。