ドラマストアが2021年3月にリリースした3rdシングル「希望前線/knock you , knock me/回顧録を編む」を掲げ、4月に行なった東名阪でのアコースティック編成も含めて5カ月にわたるワンマンツアーを実施。全14公演セットリスト被りなしで挑み、そのファイナル公演が9月20日にEX THEATER ROPPONGIで開催された。
SEに合わせてフロアーからは早速クラップが起こり、メンバーが登場。ライヴは「アポロ -2020-」で幕を開け、長谷川 海(Vo&Gu)の柔らかな歌声がじっくりと会場に響く。鳥山 昂(Gu&Key)が鍵盤で奏でるリズミカルなイントロが印象的な「三文芝居」でメンバーの表情にも楽し気な笑顔がこぼれ、そこから食い込むように「希望前線」へ。光が差し込むような明るさと、気持ちを掻き立てる疾走感があふれる同曲。《走り出したなら 止まりたくないよな/心の向くまま 行きたいとこまで》と歌うサビに合わせて吸い寄せられるように上がる掌や、その歌詞に答えるように強く握られた拳も多く見え、リスナーの気持ちを引き上げてきた一曲であることを実感した。
緊張感も解けてきた中盤はダンサブルな「イミテーション・ミュージックショー」をはじめ、アッパーな曲を中心に展開。「Dancing Dead」では特殊効果で天井に向かってスモークが噴射され、派手な演出の中でも嚙みつくようなギターソロがギラリと睨みをきかせる。ポップな「チョコレートボックス」からは打って変わり、クールに始まる新曲「ALONE」は嘆きが込められているようにも聴こえるが、どこか自分自身を鼓舞するような鋭さも覗かせる。松本和也(Dr)のパワフルなドラミングや髙橋悠真(Ba)のスラップなど、ロックテイストが濃く、またひと味違ったドラマストアの魅力を感じられる注目のナンバーだ。
また、バラード曲のパフォーマンスも秀逸で、「東京無理心中」のノスタルジックなサウンドや、か細い歌声で表現されるストーリー性に引き込まれた。ノエビア ブランドWEB CM 「2021 年春篇」に抜擢され、10月13日からの配信リリースも決定した新曲「花風」では、会場中に花びらが舞っているような照明も美しく、儚げなメロディーがふわりと胸を突く。そして、長谷川がスタンドマイクで全身を使って歌い上げた「回顧録を編む」は、歌詞ではささやかな情景を描いているが、低い音域で滲み出る温かみやストリングスを入れたアレンジなど楽曲の持ち味も相まって、ライヴではどこまでも広がっていくような壮大さを帯びていた。
終盤はフロアーのボルテージをグッと上げ、4曲を連続投下! カラフルな照明に照らされながら弾けるリズムの「冒険譚」を披露し、自問自答する様子が書かれた「世界はまだ僕を知らない」では長谷川が会場の中心を指差して《いつまでもここでこうしてたい》とアツく歌い上げる。サビで勢い良く駆け上がっていく「アンサイクル」で熱気も漂う中、本編最後のMCへ。長谷川が“もう伝わってると思うけど”と前置きしながら、“帰る場所は自分が作っているわけではなく、自分のことを大事に思ってくれている人が作ってくれているんだなと痛感する2年でした”とファンへの感謝を語り、最後に披露したのは「knock you , knock me」。本公演はコロナ禍による緊急事態宣言中の開催で、会場のキャパシティーの半分以下の動員となったことから、“未完成のEX THEATER ROPPONGI公演をリベンジして完成させたい”と悔しい想いをこぼす場面もあったが、シンガロングの変わりに目いっぱい鳴り響く手拍子を聴いて、“最高の景色だ!”と叫んだのも正真正銘の本音だろう。ドラマストアがリスナーを深く引き込む力は、リズム隊のハネ感やグルーブ、小気味良さを際立たせるギターとキーボート、ヴォーカルのメロディーなど楽曲そのものにもあるが、ツアー全公演のセットリストを被りなしにしたことも含め、何ひとつ妥協せず、むしろ難解で魅力的なほうへと進んでいく精神なのではないだろうか。
また、最後には長谷川が画面に向かって“配信で観てるみんな! 君たちの選択は絶対に間違いじゃないからな! 元気な姿でまた会いましょう!”と伝え、万全な状態でのライヴを約束。12月3日には『7周年記念無料配信ライブ』も予定しており、5カ月にわたる長期ツアーを終えてもまだまだ突き進んでいく逞しい姿に、満員のEX THEATER ROPPONGI公演もそう遠くはないと確信した。
撮影:小杉歩 /取材:千々和香苗
ドラマストア
ドラマストア:“君を主人公にする音楽”をコンセプトとした関西発・正統派ポップバンド。2020年4月にリリースしたミニアルバム『Invitations』に収録の「東京無理心中」が柴門ふみ原作のドラマ『女ともだち』主題歌に。さらに、同アルバム収録の「可愛い子にはトゲがある?」が2020年年間USEN HITインディーズ・ランキングにて1位を獲得。同年11月に敢行した自身最大規模のTSUTAYA O-EASTは、見事完売。21年3月には初のトリプルA面シングル「希望前線/knock you, knock me/回顧録を編む」を発表する。