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【ライヴレポート】 『No Big Deal Tour 2021 -Young Groove-』 2021年8月3日 at 東京・渋谷Star Lounge

2021年08月03日
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04 Limited Sazabys、THE PINBALLS、Wiennersらを輩出したNo Big Deal Recordsに所属している4バンドよるレーベル・ツアー『No Big Deal Tour 2021 -Young Groove-』が8月3日、東京・渋谷Star Loungeからスタート! “Young Groove”とタイトルで謳っているとおり、No Big Deal Recordsが主催している『No Big Deal Records Audition』の19~21年のグランプリ受賞バンド4組が一堂に会する、まさにレーベルの将来を担う新人のショーケースでもある同ツアー。7月30日に予定されていた名古屋公演が延期になったり(振替公演は9月29日)、SHIFT_CONTROL(以下、シフコン)が東京公演の出演をキャンセルせざるを得なかったり、コロナ禍らしい波乱含みのスタートとなった(さらに東京公演は会場の冷房が故障したり)。しかし、東京公演に出演した3バンドはそんな逆境をものともせず、次々に熱演を披露していったのだった。

出演:peeto、Bye-Bye-Handの方程式、藍色アポロ

■ 藍色アポロ ■

トップバッターは21年のグランプリ受賞バンド、藍色アポロ。オープニングを飾る「通る電波」のイントロでナガイ(Vo&Gu)がかき鳴らすギターの音が出ないというアクシデントにいきなり見舞われながらもリリースされたばかりの1st EP『312g』より「shinto-arts」「限界高速」「色褪せる」を含む新旧の計7曲を披露。ナガイの歌を中心に疾走系のエモーショナルなギター・ロックというこのバンドが持つ太いバックボーンを印象づけていった。石川雄大(Dr)がタイトなリズムキープに徹する一方で、みゃん(Gu)、すず木ひろ史(Ba)が応酬し合うナガイの歌に負けないくらい耳に残るフレーズも聴きどころだったが、さらにもうひとつ、筆者が惹かれたのは小気味いいリズムが印象的な「線、曲がって止まって」をはじめ、多くの曲の間奏でぐっと白熱する4人の演奏。「限界高速」ではポストハードコアなんて言葉が頭を過ったが、バンドが掲げる“下北沢発4ピースオルタナティブロックバンド”のオルタナは決して伊達ではないわけだ。そんなユニークさに興味が湧いた。
“いつかもっと大きなところで、みんなにいい景色を観せたいと思いながらやっていきます!”(ナガイ)
そう抱負を語ると、4人は「線、曲がって止まって」でシューゲイザーなんて言葉も思い浮かぶほど轟音を鳴らすと、「カゲロウ37°C」を駆け抜けるように演奏して熱演を締め括った。

■ Bye-Bye-Handの方程式 ■

その藍色アポロからバトンを受け取ったBye-Bye-Handの方程式(以下、バイハン)は20年にグランプリを受賞した大阪の4人組。青春パンクを思わせる、どこかノスタルジックで人懐っこい「あの子と宇宙に夢中な僕ら」、バンドが持つやんちゃな魅力が表れた最新ミニアルバム『ろまんす快速特急』収録の「romance tower」と立て続けに演奏したところで、彼らもまた汐田泰輝(Vo&Gu)のギターの弦が切れるというアクシデントが発生。“誰かギター貸して! ナガイくん!”という汐田のSOSに応え、早速バックステージから代わりのギターが渡されると、“これがレーベルツアー(の良さ)!”と汐田はウィットに富んだひと言でNo Big Deal Recordsが持つアットホーム感をアピール。そんな同レーベルに所属してから一年が経ち、改めてレーベルに迎えられたことに感謝を述べた汐田は“僕たちを迎えて良かったと感謝されたい。そういうバンドにいつかなりたい”と抱負を語る。人を食ったユーモアセンスに加え、岩橋茅津(Gu)、中村龍人(Dr)が激しいアクションを見せるエネルギッシュなパフォーマンスもバイハンの魅力だ。中盤ではバラードの「少女は月夜に夢を見る」も披露。ラストは清弘陽哉(Dr)も含め、メンバー全員で声を重ね、オーディションで演奏したというアンセミックな「ロックンロール・スーパーノヴァ」でグッと盛り上げ、“少し変だが、クセになる音楽をテーマに”と掲げるバンドの存在をダメ押しで印象づけたのだった。

■ peeto ■

この日のトリを務めたpeetoの演奏はムーディーなイントロを持つ「Fallin'」でスタート。とっぽいルックスからはちょっと想像しづらい野田択也(Vo&Gu)のハイトーンヴォイスに面食らっている様子の観客に野田は思わずニヤリ。その野田が“楽しんでいこうよ。いい夜にしようぜ”とフロアに声をかけ、この日、バンドが披露したのは、夏っぽさを意識したという2ndフルアルバム『GAL』からの5曲を含む全6曲。バイハン同様、20年にグランプリを受賞したpeetoは“Urban Rock from Town”を掲げる柏の4人組。R&Bの影響をバックボーンにシティポップに通じる魅力も持ちながら、野田がアコギを弾いた「MALIBU」が70~80年代の日本のニューミュージックを連想させたり、1stフルアルバム『LIKE A WAVES』から選曲した「Babymoon」がサーフロックっぽかったりと安易に型にハマらないところも大きな魅力だ。また、リラックスしているようで、ここぞという場面では白熱するバンドの演奏も聴きどころだった。だからこそ彼らの曲はただムーディーに流れていかず、一曲一曲がしっかりと印象に残る。ソロを応酬しあう鮨朗(Gu)と松井友哉(Ba)、アンサンブルをどしっと支えるKoto(Dr)それぞれに観せ場があったことも記しておきたい。
“同じような道を目指している仲間に出会えるのは嬉しい。今日、観に来てくれた勘のいいお客さんも僕らの行く末を一緒に歩んでもらえたら嬉しいです。No Big Deal Recordsをよろしくお願いします”
藍色アポロ、バイハン、そしてこの日、出演できなかったシフコンの分も含め、そんなふうに挨拶した野田の想いの中には、自分たちこそがレーベルを代表する存在になるという大きな志もあったんじゃないかと思う。そして、ラスト・ナンバーは「TAKE WIND」。ハスキーさも入り混じる野田のハイトーンの歌声の魅力を存分に生かしながら、切なさと懐かしさを乗せたファンキーな演奏に観客たちは心地良さそうに体を揺らしたのだった。

撮影:かい/取材:山口智男

SET LIST

試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    1. 通る電波

  2. 6

    6. 線、曲がって止まって

  3. 7

    7. カゲロウ37°C