小倉 唯にとって初の配信ライヴ『小倉 唯 ONLINE クリスマス ライブ 2020 ~Winter Twinkle Magic~』が12月24日のクリスマスイブに開催された。“Winter Twinkle Magic”というファンタジー感あふれるタイトルが名づけられたこの公演では、“冬”や“魔法”がテーマになっていて、配信だからこそのさまざまな演出が楽しめる内容で届けられた。
クリスマスのベルがかすかに聞こえ、雪が舞う。その中をひとりで歩く小倉が立ち止まると、ライヴタイトルの“Winter Twinkle Magic”の文字が浮かび上がった。そして、《冷たい指先 ポケットに入れて》と1曲目の冬のラブソング「winter tale」の冒頭をアカペラで歌い上げてからライヴがスタート。立て続けに今度は4人のダンサーとテレビアニメ『変態王子と笑わない猫。』のエンディングテーマ「Baby Sweet Berry Love」を拳をあげて弾けるようにパフォーマンスを繰り広げる。
“みなさんこんばんは! あっ、“こんにちは”かな? こんにちは! 小倉 唯です!”と元気いっぱいに画面に向かってマイクを向ける小倉。“私自身初めての配信ライヴになるんですけど、みなさんちゃんと見えてますかね?”とドキドキした様子で、たくさんあるカメラに“メリクリ!”と思い切り手を振る。ライヴの冒頭は白いシルクハットにコルセット風のワンピースというマジシャンっぽい衣装を身に着けていたが、これはスカート部分に雪の結晶が描かれていたりと、“Winter Twinkle Magic”の世界観を意識して作ってもらったそうだ。そんな小倉の“じゃあ、回りますか”という問いかけに頷くダンサーズ。“今日はダンサーズに“回って”って言ってもらおうかな? お願いします!”とのフリに“回って~!”と声を合わせると、クルッと回り、衣装の全体像を画面の向こうのオーディエンスに伝えるのだった。
続いて「ハピネス*センセーション」へ。CDのリリースインタビューの際、“この曲は空やシャボン玉、風船といったものがキーワードになっています”と語っていたが、この日のステージでもたくさんのシャボン玉が飛ばされる。そして、“さぁ、みんなで一緒にやりましょう! ゆい・ゆい・おー!”と声をかけて、MVで行なっていたように4人のダンサーと手を合わせて星型やハートを作り、小倉とダンサーズとの一体感を作り上げる。ダンサーから星型のステッキを手渡された小倉が、そのステッキを回すと、なんとダンサーの手にリンゴが現れ、さらにダンサーが小倉を大きな布で一瞬覆い、それが落ちるとオレンジと黄色の衣装に早変わりして、「Honey♥Come!!」を披露。小倉がカメラを一瞬手で覆い、それを外すともとのマジシャン風な衣装に戻り、「瞳の国のアリス -Dance Music Edition-」へ。ここでは今回のライヴの大きな注目ポイントでもあるマジック演出が、ふんだんに散りばめられていた。ダンサーが手に持った白いロープ状のものを小倉が手でスーッと撫でると赤いスカーフになったのをはじめ、小さなハンカチを丸めると卵に変わり、小倉とダンサーズが一斉に左手を差し出すと、5人の手に一瞬でステッキが現れるといったマジックをパフォーマンスの合間で披露。最後に小倉がウインクをするとそこから光の粒が現れ、ハートの軌跡を描きながらバーチャル空間に移動してスマートフォンゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』で小倉が演じているキャラクターが歌う「ハッピーシンセサイザ」のカバーをエネルギッシュに届けた。
ステージに立つ上での心情を歌った「Look@Me♡」は、このライヴが初披露。弾けるようなメロディーでパフォーマンスする小倉のバックに“唯ちゃんはずっと私の憧れです!”“唯ちゃんの曲で今日一日頑張れる”など事前に募集したファンからのメッセージが流れる。中には“直接唯ちゃんを観れる日を待ってます!”というメッセージもあり、前述のインタビューの際、小倉が“今までの経験から、この曲はかなり人気曲に成長してくんじゃないかと思ってます。今後ライヴで歌えるようになったら、本当に会場の空気をガラッと変えるほどパワーを持つ、盛り上がりソングになることを期待してます”と語っていたことを思い出した。今後生のライヴができた時に、よりいっそうパワーが増して輝くに違いないだろう。
“私も大好きな楽曲のひとつで、ようやくこういうかたちでみなさんに披露できるのが、すごく嬉しかったんですけれど、振付けがこの楽曲、とっても可愛くて”と話す彼女の説明によると、途中に入る“Y・U・I・Charm”というかけ声の部分は、指で“Y”“U”“I”“C”を表しているとのこと。そのお気に入りの振付けをやっとファンの前で観せることができて、心の底から嬉しそうな表情を浮かべた。
“残り3曲、全力でついてきてくださいね!”――紫陽花をイメージしたというワンピース姿に変わった小倉は、黒い衣装のダンサーズとともにクールな世界観を表す。ここからラストまでの怒涛のように曲を繰り出していく。切ない恋心を描いた「雨の森はウソつき」では最後に感情を爆発されるように高音を響かせ、テレビアニメ『Z/X Code reunion』のオープニングテーマで“強く生きる”という決意が込められたロックナンバー「Destiny」ではきりっとした表情で、Dの文字をバックに気高く歌う。そして、小倉の背後で光の扉が開き、テレビアニメ『カンピオーネ!』 エンディングテーマ「Raise」へ。“これでラスト、まだまだ盛り上がっていくよ!”とバラの花の映像を背景にかけ声をかけて、画面越しの観客と一体になれるようにマイクを差し出す――。
“ありがとうございました! みなさん素敵なクリスマス過ごしてくださいね”。
シャンシャンとベルの音が響き、ステージ上にはクリスマスプレゼントの箱やクリスマスツリーが現れ、白い衣装を着たダンサーズが中央に置かれた大きなプレゼント箱に集まる。そのひとりが箱の蓋をとると、赤いサンタクロース風のワンピース姿の小倉が登場! そのままキュートなポップソング「I・LOVE・YOU!!」に。“名残惜しくはあるんですけど、次が最後の曲になります”と披露された配信限定リリースしたばかりの「Very Merry Happy Christmas」では、その歌詞に連動してクリスマスツリーの星を飾り、“これからもずっとよろしくね!”と呼びかけると、背景にMVでは未使用だったカットが流れた。
締めの挨拶で配信ライヴを経験して感じた率直な想いを語った小倉。観客の声が直接聞こえなくて、どんな気持ちで受け取ってもらえたか不安な気持ちもあったそうだが、“こうやってかたちにすることができて、この画面の前で観てくれているみんなが、笑顔で過ごしてもらえるような、そんな素敵なクリスマスのライヴにできたんじゃないかなって、今、この瞬間、私は感じています”と充実した表情を見せた。最後に2021年春に13枚目のシングルのリリースが決定したことも発表され、来年も走り続ける小倉 唯に期待が高まるばかりだ。
撮影:上飯坂一/取材:キャベトンコ
小倉 唯
多くの話題作で活躍する声優でありつつ、2012年に「Raise」でアーティストデビュー。18年には初となる単独アリーナ公演を成功させ、19年に行なった自身3度目のライヴツアーでは6都市7公演を大成功に収め、約20,000人を動員した。