GSや東京ロッカーズ、インディーズブームにバンドブーム、タイアップ主流の時代やプロデューサーの名前で左右される時代、さらにミリオンセラー連発の時代からCD不況の現在...など日本のロックも歴史が語れるようになった。テン年代と称される今、そんな歴史を築いてきた三組のバンド/アーティストが同じステージに立つ『SHIBUYA R&R TRIANGLE』。温故知新? そんなものはロックにはない。三組とも刻んでいるのは“現在”であり、ステージに立ってしまえばベテランも新人も同じだ。違うのは、そこで何を魅せられるかだけである。当然、それが三者三様に堪能できたイベントだった。
トップバッターはZIGGY、THE EASY WALKERS、THE STREET SLIDERS、THE WILLARDのメンバーからなるTHE PRODIGAL SONS。市川”JAMES”洋二(Ba)と大島治彦(Dr)という鉄壁のリズムセクションが安定感抜群のグルーブを作り上げると、ビブラートを効かせた森重樹一のセクシャルなヴォーカルと、松尾宗仁と五十嵐”Jimmy”正彦の饒舌に絡むルーズでブルージなギターが初っぱなから客席に火を付ける。艶やかで如何わしいく、毒っぽくも魅惑的で、フックも棘もあるロックンロール。そんな矢継ぎ早で繰り出される極上のバンドサウンドに、オーディエンスは終始酔いしれていた。
二番手は横道坊主。年頭から病気療養中の橋本 潤に変わってサポートメンバーがプレイしているとはいえ、そこは初代ベーシストの林田正樹だ。完璧に横道坊主サウンドを作り上げ、瞬く間に人間味あふれる温かい空気を場内全体に行き渡らせた。それに対して両手の拳を高く突き上げ、一緒になって歌っている観客。そんな彼ら彼女たちを喜ばせる出来事が起こる。“医者からのGOが出た”と橋本がステージに帰ってきたのだ。会場中が歓喜の声に沸いたことは言うまでもない。本来のスタイルが復活した横道坊主。歌っているかのようなベースを操る橋本、満面の笑顔でプレイするメンバー、顔をくしゃくしゃにして泣きながらも欣快に堪えない表情で拳を掲げるファン...感動のステージがそこにはあった。ラストは林田も登場しての5人の横道坊主と、涙と笑顔の観客による「情熱」で締め括った。
イベントのトリを飾ったのはDe+LAX。4月にギタリストがチェンジしたばかりとはいえ、さっきまでの温和な空気を挑発的なロックナンバーで粉砕し、自分たちの世界を構築していく様はさすがであり、圧巻だった。絶対的な存在感を持つ宙也のヴォーカリゼーションとセンスフルな16ビート系サウンドが、客席を大きく波打たせ、場内の温度を加速度的に高めていく。その一方で“日本人なら忘れてはならない8月”と「ダンデライオン」も披露。“攻める”だけでなく、心の奥底を揺さぶり、切々と豊潤なメロディーと言葉を投げかけた。
そのバンドにしか出せないグルーブとビート、色、温度、そして甘味までな毒。それはまさにキャリアによって磨かれたものであり、三者三様に強烈なオリジナリティーとして観る者に印象付けた。そんなバンドが一堂に会したとなると、それぞれの演奏だけで終わるはずがない。最後はDe+LAXにTHE PRODIGAL SONSの森重樹一&松尾宗仁、横道坊主の中村義人(Vo)&今井秀明(Gu)が加わり、日本のロックの永遠の名曲であり、もはやスタンダードとも言えるRCサクセションの「雨上がりの夜空」がプレイされた。ワイルドな森重、ハートフルな義人、妖艶な宙也という3人のヴォーカルによる「雨上がり~」のインパクトは絶大! もちろん、オーディエンスの盛り上がりも尋常ではなく、ステージ上も客席にも笑顔が咲きこぼれ、最高潮に盛り上がる中、同イベントは大団円を迎えたのだった。