メジャー移籍ミニアルバム『マストバイ』の発表直後、ヴォーカルの伊藤文暁が脱退。間近に控えていた夏フェスでは、ゲストヴォーカルとして鴇崎智史が参加。準備期間もさほどなかったと思われるが、新生serial TV dramaを感じさせるベストアクトを見せつけた。そのまま正式メンバーとして鴇崎が加入し、本ツアーを回り、今日の最終日を迎える。
これまでのステージと大きく変わったことと言えば、アクの強いヴォーカルの存在。ステージ上を縦横無尽に動き回り、メンバーと必要以上に絡み、時には挑発しながら全身を使って歌い上げる。感情的に訴えかけるヴォーカルのおかげで、例えば変態チックなギターを轟かせて注目を浴びる新井弘毅がまともに見えるぐらい...そう、これまで以上に楽器隊はプレイヤーとしてアピールしなくてはならないのだ。と、同時に何をやっても“アリ”な環境が出来上がったことで、より自由に、やりたい放題暴れることができるというもの。メンバー間でのせめぎ合いがさらなる高みへと押し上げ、これまでとは違うシリアル像を築き上げていた。
リーダーの新井も“バンドの中に新しいエネルギーを感じている”と表情を緩ませて語るほどに、可能性に満ちあふれている。新曲「ユニコーンの角」からもバンドの状態の良さが伝わってきた。さらにダブルアンコールでは、別れの悲しみだけでなく、その中に存在する幸せな部分を描いたという新曲が披露されたのだが、胸を熱くさせる壮大なバラードには今の彼らにしかできない想いが詰め込まれていたように思う。