2017年に発表した「Brand New Day」のMVの再生回数が30万回に迫る勢いの大阪発の“ポップパンク”に収まらないバンドAIRFLIP。3月6日にリリースしたEP『Friends In My Journey』のリリースツアーの初日を観たのだが、もはや渋谷CYCLONEは東京でのホームグラウンドになっているようで、根付き始めたファンベースを確認できた。
この日は先輩、盟友、後輩バンドであるSECRET 7 LINE、INKYMAP、FAITHがAIRFLIPの旅立ちをサポートするかたちで出演。仲間とファンのエールに応えて登場したAIRFLIPの佇まいは、リアルタイムでELLEGARDENを目撃できなかった、なんなら04 Limited Sazabysも後追いだったという10代にとって新たなヒーローなんじゃないかというのが第一印象。帰国子女のSatoshi(Vo&Gu)の英語のスムーズな発音と、サビで印象に残る日本語を配置するセンスの自然さ。ポップパンクやメロコアでも同期を用いるバンドも多い中、音像のダイナミズムを担う、手数と足数の多いRitsuya(Dr)のドラミングも効いている。加えて、あくまでも曲を支えるベースに徹してソロをひけらかすことのないFujimon(Ba)のベースもいい。
主にニューEPからの選曲だったが、爽快に伸びていく8ビートからファストなブラストビートに変化し、再び8ビートに戻る展開を持つナンバーなど、まだそこまで音楽的なレンジが広いわけではないのだが、すでにコアなファンも初見のオーディエンスも素直にそこにある音とビートに反応できる自由さーーそれこそがAIRFLIPの懐の大きさなんじゃないだろうか。典型的なギター&ヴォーカルとリフ主体のリードギターGucci(Gu)のアンサンブルも極めてシンプルだが、メンバー全員がSatoshiの歌を押し出すような、曲のためのプレイに徹していることが、テクニカルなバンドが多い中でむしろ潔い。
ツアー初日の渋谷CYCLONEから約20本の音楽の旅を経て、7月にはTSUTAYA O-Crestでスペシャルライヴを行なうことを発表すると、フロアーからは“ワンマン!?”と問い掛ける声が続出。まだ詳細は発表できないとSatoshiが制したが、この親密ながらうっすらリスペクトを集めているムードは、AIRFLIPをもっと広いフィールドに押し出す原動力になるだろう。
世の中に数多存在するポップパンクバンドの中でも、2020年代にも通用しうるバンドは果たしてどれだけいるだろうか。AIRFLIPはトレンドより魅力的な曲の良さや誠実なキャラクターで、彼らが愛する音楽を表現し続けられるのではないか。そんな予感を持ったツアー初日だった。
撮影:@nozomeeeeee/取材:石角友香
AIRFLIP
エアーフリップ:大阪発のポップパンクバンド。2015年7月に現在のメンバーとなり、16年6に初全国流通盤のミニアルバム『MILES FLAG』を発表。ハイトーンかつネイティブな発音の英詞が特徴的なヴォーカルを武器に、STATE CHAMPS、as it isなど数多くの海外バンドのサポートアクトも行ない、国内ではTOTALFAT、HEY-SMITH、SWANKY DANKなどのツアーにも出演。19年3月には日本コロムビア内のレーベル“TRIAD”よりミニアルバム『Friends In My Journey』をリリース。