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LIVE REPORT

宇多田ヒカル ライヴレポート

【宇多田ヒカル ライヴレポート】 『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』 2018年12月5日 at さいたまスーパーアリーナ

2018年12月05日
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宇多田ヒカルの実に12年振りとなる国内ツアーの埼玉公演が12月4日(火)&5日(水)にさいたまスーパーアリーナで行なわれた。ここでは2日目の模様をレポートする。

せり上がりで登場した宇多田は背中が大きく開いた黒いドレスを纏い、全身で楽曲の温度を確かめながら「あなた」を歌っている感じで、「道」では緊張をほぐすように観客へ手拍子を求め出す。“宇多田ヒカルって本当に居るんだね!!”なんて驚く声も聞こえてきたけれど、この行為ひとつとっても人間的で愛らしい。しかし、ひと度入り込めば複雑なテンポだろうと優雅に、抑揚たっぷりに歌い、《目に見えるものだけを 信じてはいけないよ》の気風の良さには生命力がキラリ。国外プレイヤーによる凄腕バンド、豪華ストリングス隊を従え、凝った舞台装置や照明の中、彼女はどんどん解き放たれていった。

“あっ! えーと、しゃべる前にお水飲んでもいいですか?”“よしっ! 次の曲...いってみよう。引き続きよろしくお願いしますね”といった感じのぎこちないMCと神々しいパフォーマンスとの差がすごい。「Prisoner Of Love」はスクリーンの火花をバックに、「Kiss & Cry」は「Can You Keep A Secret?」のコーラスを含んだ素敵マッシュアップ、「SAKURAドロップス」はヒッキー(宇多田の愛称)がシンセも演奏、「ともだち」「Too Proud」では高瀬譜希子をダンサーに配すなど、ドキドキだらけの展開! 「Too Proud」のラップはなんと日本語で、《旦那の愚痴 子供に言うお母さん》ってくだりから《男と女は出会った瞬間が最高って ビートたけしが言ってるインタビュー ネットで読んだ》なんていうラインも。

又吉直樹との対談番組を装った爆笑ムービーを挟んでライヴは後半へ。白ベースの衣装に着替えた宇多田が突如センターステージに現れ、客席を大いに沸かせる。想いがほとばしる「誓い」「真夏の通り雨」を固唾を呑んで聴き入り、「花束を君に」でやさしく包み込まれて涙。さらに「Forevermore」で、絶望の中のユーモアを描き届けた。

“一時期は人前に出るのも無理だったんだけど、ツアー始まってみたら今までで一番ライヴを楽しんでる状態にいるんだ。デビュー20周年よりも、こうしてやれてることが嬉しいです”と感極まった表情で話す宇多田。その後の「First Love」「初恋」の清々しさで再び泣けてしまう。それにしても、いろんな愛や情に揺さぶられた。情熱、本能、欲望、孤独、別離、虚無、葛藤、甘受、内省、感謝が交錯し、始まりと終わりを何度も味わった時間が、「Play A Love Song」で雪解けのようにふんわり収まっていく。

活動休止があり、母の死を悼んで喪に服し、彼女は今新しい歌を歌えている。アンコールラストは“いつもの自分らしく楽しんで!”と呼びかけた「Goodbye Happiness」。生きる力が沸いた。またライヴをやってほしい。好きなペースでいいので、待っています。

撮影:岸田哲平/取材:田山雄士

宇多田ヒカル

ウタダヒカル:1983年1月19日生まれのシンガーソングライター。98年12月発表のデビューシングル「Automatic/time will tell」はダブルミリオンセールスを記録し、そのわずか数カ月後にリリースされた1stアルバム『First Love』はCDセールス日本記録を樹立。未だその記録は破られていない。10年に“人間活動”を宣言し一時活動休止期間に入ったが、16年4月に配信シングル「花束を君に」「真夏の通り雨」のリリースによってアーティスト活動を本格始動し、同年9月に発表した6枚目のオリジナルアルバム『Fantôme』は自身初のオリコン4週連続1位や全米のiTunesで3位にランクイン、CD、デジタルあわせミリオンセールスを達成するなど、国内外から高い評価を受けた。