2018年2度目となる全国ツアー『D'ERLANGER SLASH DANCE TOUR 2018』の最終公演が、11月25日に品川ステラボールにて開催された。インタビューの際にkyoにドラムのほうを向いたまま歌っていることが多いことについて尋ねたことがあるのだが、彼は“誤解を生むかもしれないけど、バンドだけを感じてやっていたいというか、そこから生まれたものがお客さんに届けばいいなというのがあるんです”と話してくれた。本公演でもフロアーに背中を向けて歌っている場面が多々あったkyo。しかし、それは両サイドの竿隊もまた然りで、ドラムのほうを向いてプレイしていることが多く、彼らが鳴らすバンドサウンドのダイナミズムが尋常ではない理由がわかったような気がした。再結成10周年のアニバーサリーを経て、11年目に突入したD’ERLANGERはますます勢い付いてるーー。
kyoのシャウトが炸裂し、オープニングを飾ったスリリングな「XXX for YOU」がグイグイと観客のテンションを引き上げていく。そして、「Harlem Queen Complex」へ。妖艶なヴォーカルとずっしりと響くバンドグルーブが緊張感を高めると、そのままつながる「Harlem Queen Romance」で内に向かっていた高揚感が解放されたように爆発的に弾ける。最新アルバム『J'aime La Vie』のナンバーでありながら、この組曲が最強の起爆剤へと育っていることをまざまざと実感した。
3曲が終わったところで、もはやライヴのイニシアティブはD’ERLANGERが握っている。圧巻だったのはミディアムなナンバーが並んだブロック。「Mona Lisa」「Je t'aime」が作り出す魅惑的な音像で酔わせ、「Loveanymore」ではSEELAのウエットでうねるベースとTetsuのドライでタイトなドラム、CIPHERのメロウなギターで描く媚薬的なスケープがフロアーを釘付けにする。アッパーでの噛み付くようなアグレッシブなスタイルも持ち味だが、ミディアムで魅せるkyoの淫靡でエロティックなヴォーカリゼーションは鳥肌ものだ。
その後もライヴはポップチューン「LULLABY」や本編ラストの「バライロノセカイ-Le monde de la rose-」で大合唱を誘い、ディープかつハードな「沈む」で観客ひとりひとりの熱量を際限まで高めると、エンドロールのように新曲「哀」で大団円。『J'aime La Vie』を引っ提げた3本目となるツアーだったわけだが、ビルドアップされた同作の楽曲が新たな武器となっているだけでなく、D'ERLANGERのパブリックイメージの、その上をいく威力を放っていたのが、なんとも印象的だった。
取材:土内 昇
D'ERLANGER
デランジェ:1983年の結成後、幾度かのメンバーチェンジを経て、88年にkyoが加入し、現在の4人がそろう。89年に発表した1stアルバム『LA VIE EN ROSE』がインディーズでありながらも3万枚のセールスを記録し、鳴り物入りで90年1月にシングル「DARLIN'」でメジャーデビューを果たすものの、同年12月24日解散。しかし、17年の時を経て、07年に復活! 08年5月には日本武道館公演を成功させ、結成10周年イヤーとなった17年にはオリジナルアルバム『J’aime La Vie』、そしてトリュビートアルバム『D’ERLANGER TRIBUTE ALBUM ~Stairway to Heaven~』を発表した。