ツーピースツインヴォーカルバンド編成の奮酉が、今年8月に1st EP『はじめのセンセーション』を発売し、それに伴うレコ発ライヴが開催された。対バンには個性あふれる、どこか奮酉の音楽性にも通じる3組が出演した。クセのあるポップ感を放つ本棚のモヨコ、男女ツインヴォーカル編成のLaura Day Romance、オルタナティブなロック衝動を吐き出すTHIS IS JAPANと続いた後、本日の主役である奮酉が登場。
“まってぃ”こと高田 蒔(Vo&Gu)、“あいしゃ”こと河西愛紗(Vo&Dr)がステージに姿を見せると、ふたりのハーモニーで幕を開ける「TOKYO」でスタート。郷愁を刺激するメロディーを響かせると、早くも会場を奮酉の色に染め上げていた。それから「Bon-no!」へ移ると、あいしゃの切れ味鋭いラップが冴え渡り、リズミックな曲調に身体は自然と踊り出す。シンセをループさせた独特な浮遊感に富む「5:40」もユニークだし、繰り出す楽曲はどれひとつとして似ていない。その後は、エフェクトをかけたヴォーカルとスペーシーなキーボードがいいアクセントになった「シグナル」をプレイ。隙間たっぷりの演奏ながら、その穏やかな曲世界にずっと身を浸したくなる心地良さだ。思わず口ずさみたくなるポップなメロディーセンスにも惹き付けられた。
ふたりの軽妙な掛け合いを活かした「XYZ...?」のスイートなメロディーも絶品であり、曲が終わるや大きな拍手が沸き起こる。そして、本編を締め括ったのは約8分に及ぶ大作「ベイベー」。変化球が多い作風の中でかなりのド直球ナンバーと言っていい。しかし、シンプルだからこそ、ふたりのヴォーカリストとしての力量が遺憾なく発揮され、その伸びのある澄んだ歌声は手放しで絶賛したいレベルであった。加えて、胸がキュンとなるメロディーに耳を傾けていると、青春ドラマの一場面のように、土手を全力で駆け出したくなる衝動に駆られてしまった。そんな気持ちにさせられるのも、この曲があらゆる感情を飲み込んだ大きなスケールを感じさせてくれるからだろう。
アンコールに入ると、まってぃは関わってくれた全ての人に感謝の意を表明し、また、あいしゃの口からは“新曲もどんどん作ってる”という頼もしい発言も飛び出した。最後に言葉遊び的な歌詞を用いた「ccc」をやり終えると、ここに集まった観客も大満足の表情を浮かべていた。2ピースを逆手に取り、あらゆる約束事から解き放たれた奮酉の音楽。今後はもっともっと、自由に羽ばたいてくれるに違いない。そう期待したくなる最高のレコ発ライヴだった。
取材:荒金良介
奮酉
フルトリ:2012年に高校の同級生で結成、活動休止期間を経て、15年に活動を再開。ライヴ、レコーディングともに、“ふたりにしかできない音楽”“ふたりでしかできない音楽”を追究し、その独創的で唯一無二の楽曲スタイル、パフォーマンスが評判となり、16年に『RO69JACK』で入賞、17年には『出れんの!?サマソニ!?』ファイナリストとなり、『SUMMER SONIC 2017』に出演。今もっともチェックすべきニューカマーの1組として注目を集めている。